我がらの新宮弁講座③~「すっこい」と「はしかい」
私たちが、小さい頃から何の疑問も持たずに使ってきた「新宮弁」。成長して都会に出ていった皆さんは、その土地で使われている言葉と故郷・新宮の言葉との違いについてどのように思われたでしょうか?そして、その後、故郷の旧友に会ったり、帰省したときなどにふとついて出る新宮弁。あなたは新宮弁をどう思いますか?
万人が認める新宮弁の達人にして新宮弁研究の第一人者・城かず坊先生が、新宮弁の深淵に迫ります。それでは、よろしくお願いいたします。(編集長・八咫烏)
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我がらの新宮弁講座3「すっこいとはしかい」
[すっこい] ずるいこと。ずる賢い。こすからい。
[はしかい&はばい] はしかいこと。はばいこと。(熊辞苑)
とにかく、解説抜きでこの語感を味わって下さい。この語感に快感を感じるあなた、マゾです。何ともいえぬストレスやイライラ、不愉快なものを感じるあなた、正常です。熊野言葉のなんと生き生きとしている事でしょう。
今まで見てきた「ばたくる」や「ひしくる」も標準語の2倍の感度、躍動感がありましたが、この「すっこい」はホンマにすっこいです。「ずるい」が偏差値60くらいとすれば「すっこい」は偏差値65くらいあると思いませんか。薄情さ、冷酷さ、ずるさの切れ味において上を行ってる分だけ罪も重いと思います。タヌキよりキツネ。イッヒッヒという感じ。快感を感じやるアンタ、サドやで。「北」の金さんや中東のFさんは、まだこの域に達してません。
「あっ、それすっこいわあ」。小学生の頃、一度ならずあなたもこう言って、誰かを罵ったことでしょう。熊野では「あいつ、ちょっとすっこいさか」と言われたらもう相当言われてます。”和訳”する場合には「あいつはずるい」ではなく「あいつは汚い」となります。
「はしかい」や「はばい」の意味は、荒っぽいこと、おとなしくない様、うるさ型、噛みついてくる様子といった意味です。「勇猛な犬」は立派な犬ですが「はしかい犬」は出来の悪い犬です。「○○の犬ゃ、はしかいさか、かなわんわ」などと言い飼い主まで嫌われます。金さんははしかいです。
また官公庁、役場などでは行政をスムーズに進めるため、密かにこんな会話が交わされます。「あの人、はしかいさかの。気ィつけんしヨ」。いやはや、熊野の人ははしかいさかのぉ。
「はばい」は「はしかい」に比べると、やや肯定的に「やり手」といった響きも持っていると思います。青少年の野球やサッカーなどで「今年のチームはなかなかはばいデ」と言えば出来の悪い犬とは違って、はしかいまでに勇猛果敢なええチームのことです。うーむ、微妙ですね。
もとぃ、戻って「すっこ」くて「はしかい」人は悪い人です。そういう輩は、熊野では「うとすけ」とか「ごくとれ」と言われます。次回は「うとすけ」と「ごくとれ」です。これはもう新宮弁やないですね。さすが南紀は方言の宝庫。ハハハッ。
●新宮弁講座と銘うっていますが、新宮弁ではないものもあると思います。「新宮弁」とは南紀地方で使われている言葉の”総称”とご理解下さい。方言の本では南紀地方のページが結構多いとか。一山越えれば鷺が烏。それはオーバーにしても、たぶん「うちではこう言うた」「ちょっと意味が違う」「知らん、聞いた事ないデ」という声が出てくるのではないかと、心配ではなく期待してました。
講師:城かず坊
城かず坊先生の「我がらの新宮弁講座」、期待した通りの好調なすべり出しです。
「すっこい」という言葉を、「タヌキよりキツネ。イッヒッヒという感じ。」と表現するこの感性はどこからくるのでしょう?
流石というかながれいし!全くそのとおりで、言い得て妙とはこのことでしょう!
かず坊先生、この調子でよろしくお願いいたします。
編集長
八咫烏
「ばたくる」「ひしくる」「すっこい」「はしかい」昭和20年代新宮生まれとしては懐かしい言葉が次々と・・・・・。
懐かしい限りです???。
いま新宮でも、TV等の影響か?だんだんと、このような新宮弁を使う子供たちが減ってきています。
アクセントも言葉も標準語となってしまい、良い事なのやら、悪いのやら・・・・・?
しかし、土地土地に残る「方言」はいいですね。聞くとホッとします。
新宮弁講座、郷土学習として地元の小中学校で取り上げてほしいものです。
「新宮弁講座」楽しみにしています。