我がらの新宮弁講座㉑~官能編

私たちが、小さい頃から何の疑問も持たずに使ってきた「新宮弁」。成長して都会に出ていった皆さんは、その土地で使われている言葉と故郷・新宮の言葉との違いについてどのように思われたでしょうか?そして、その後、故郷の旧友に会ったり、帰省したときなどにふとついて出る新宮弁。あなたは新宮弁をどう思いますか?

万人が認める新宮弁の達人にして新宮弁研究の第一人者・城かず坊先生が、新宮弁の深淵に迫ります。それでは、よろしくお願いいたします。(編集長・八咫烏)
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♪ちょっとだけやデ~~♪♪
あぁ、重いテーマを背負てしもた・・。

体育系の私は、ツヤのあるアプローチや、スウィートスポットを捕らえるテクニックや、きわどいポイントを攻めるノックなどは、ちぃ~とはイタセルかもしれませんが、こういうテーマはどーも苦手・・。大体、語るもんチャウで! と言いたい。

この楽しそうなテーマを前に、なんで苦悩せなアカンのか、トホホ! しかし、これも避けては通れない・・ 新宮弁講座の定めか。

前号で「次回は官能編です。もうダメ~~」と予告を打ったが、この時に「もうダメ~~」と、なんで東京弁で表さなアカンのかと新宮弁講師としては、はなはだ疑問に思いました。

しかし、「もうあかんワ~」でよいのか。「もうあかんデ~」でいいのか。「もうあかんゲ~」でいいのか。「あかんの~」「あかんのし」でエエんか、と考えた。

いや、エエない。エエないんやけど、ないのでアル! 京都風に「あきまへんえ」や「やめとくれやす」といったような艶っぽいニュアンスを持つ言葉が熊野にはなかった。

なるほど熊野はメゲない、熊野は泣かない、熊野は受身にならない、熊野はメメしくない、熊野に被害者は似合わない。そやけど、熊野に艶っぽさはナイ・・・。新宮弁の壁を感じた。

南国の太陽は、官能的な言葉をも蒸発させてしまうのかも知れない。日本有数の雨に南国の陽射しがからめば、これまた一気に粘菌発生の世界となり、熱帯雨林風になってしまう。熱帯雨林は、官能の世界とは少しくズレてしまうのでアル。

さて、困った。しかし、このまま放っとくわけにもいかない。熊野にもひとつやふたつくらいエロスはあるはずである。きっと淫靡な世界があるに違いない。探してみよう・・、と思って「新宮弁大辞典」を見た。

あった、あった! 「しりこぶた(尻)」とある。「またぐら(股間)」もある。「ふんぐり(?)」もあった。

しかし、なんかこう~、ちょっと違うナー。オーイ! 官能の世界!! どこぃ行ったんな、ワレゃ~! とその時。お、ついに見つけたド。「ねぶる(舐める)」や。

京言葉の上をいく官能の熊野言葉。ついに見つけた。しかし待て、待て!「ねぶる」は、宮崎・熊本・大分・福岡・山口・広島・鳥取・高知・大阪・京都・奈良・福井・愛知・岐阜・三重にもある。こらアカン! 新宮だけやない。

エ~イ! ほしたら、これはどーナ!! 「ねずる」や、ネ・ズ・ル!! ン、どこにもない、やった~!! バンザ~イ!!

たった一文字のひねりを加える、これが熊野のセンスというもの。官能の熊野言葉、新宮弁官能大賞は「ねずる」に決定~!! ウ~ン、淫靡な音感が響きわたりますナ~。熊野のエロスここにあり。ねずりまくったるで~、ワレゃ~!

それでは、悶絶の亜熱帯風耽美派怪奇官能譚を、夢枕獏風(?)にどうぞ。

ぬくいぬくい(温かい)熊野のつゆり(梅雨)は、雨また雨・・。
ぴったりとひっついて(くっついて)離れない二人。くちびろ(唇)からは
つー(説明省略)が糸を引き、ひたのさき(額)からは大きな汗が、しずこ(滴)
となってぽたぽたと。

妖艶なるねしょ(女)と怪しげなおとごし(男)が、こよさ(今宵)もまた、
いび(指・なかでも、こやゆび=小指)をからませながら、にちゃついて(い
ちゃついて)いる。
男は、あばえる(甘える)女のやらこい(柔らかい)みみたぼ(耳たぶ)をそっ
とねずった(効くネ~、さすが大賞!)。

しかし、いね(姐)は
「いや、こころわりぃヨ!(気持ち悪い!)」
と、つぶやきながら逃げようとする。なおも、けつぺた(お尻)をいじくろうと
する(触ろうとする)男に
「ちょっと、気色悪りヨ!」
と、女は後すだり(後ずさり)する。
「はて?、妙なおなごじゃ、さては・・」

脇差しに手を伸ばそうとしたその瞬間。蛇の化身となって女に化けていた大蛇は、
大きな口を開けて男に襲いかかった。
「うわー、なんな~、コレは~」
男はひしくって(悲鳴をあげて)逃れようとしたその時、ハッと目が覚めた。
「夢やったか・・」

あたりを見渡すと今しがたの大蛇であろうか、ごとびき(大きなカエル)を咥え
た大きなヘビが、畳の上をのたくる(クネクネと身をくねらせる)ように、障子
の隙間から夜の闇へと消えて行った。漆黒の暗闇からは、魑魅魍魎たちが今にも
蠢き出しそうな妖気が漂ってくるのであった”(完)
(なに、ワケのわからんことを)(あー、エラかった!!)

次回は「FM新宮」です。♪ジェット・ストリ~ム♪♪

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