2021-10-10 / 最終更新日時 : 2023-08-01 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」より~「球花」 球花 松の花 初めから微小な球形をした粒の集まり 粟 の穂に似た黄色の穂 それが現われるのはいつだっ たか 裸木ばかりの冬の林に 高い松の木が傾いて 一本だけ立っていた 丘の上を歩きながらその木を 探して目が彷徨う 松毬 […]
2021-09-29 / 最終更新日時 : 2023-08-01 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」より~「終わりの夏」 終わりの夏 従妹はバッハばかり弾いていた 少し速いんじゃない 指が心持ちゆっくり鍵盤から離される 私は花瓶を持ち上げる シチリアのことはよく知らなかったが 波の中に島の形が浮かんで消えた 断崖の上に緑の土地があり 大き […]
2021-06-28 / 最終更新日時 : 2021-06-24 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」より~「球形の蕾」 ようやく秋らしい気候となってきたようですが、みなさま如何お過ごしでしょうか。秋と言えば読書の秋。新宮の歴史・文化にどっぷりと浸ってみませんか。 新宮高校出身の詩人・荻悦子さんが新しく詩集を出されました。題して、「樫の火」 […]
2021-06-03 / 最終更新日時 : 2023-08-11 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」より~「蔓の午後」 ようやく秋本番といった季節になりましたが、みなさま如何お過ごしでしょうか。秋と言えば読書の秋。新宮市熊野川町出身の詩人・荻悦子さんの詩の世界に浸ってみませんか? 昨年、出版されたばかりの詩集「「樫の火」(思潮社)の中の一 […]
2021-06-01 / 最終更新日時 : 2023-08-11 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」より~「紫」 ようやく秋本番といった季節になりましたが、みなさま如何お過ごしでしょうか。秋と言えば読書の秋。新宮市熊野川町出身の詩人・荻悦子さんの詩の世界に浸ってみませんか? 昨年、出版されたばかりの詩集「「樫の火」(思潮社)の中の一 […]
2021-05-27 / 最終更新日時 : 2021-05-18 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」より~「往還」 往還 気づかないふりをするのに 疲れた いや 飽きてしまった 不意打ちに会い (そうだったのか) 隠されていたことを (とうに気づいてはいたが) いまはっきりと受け止める アスファルトの広い道 交差点の中央が急に盛り上が […]
2021-05-25 / 最終更新日時 : 2021-05-18 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」より~「影絵」 影絵 暮れかかるころ 真新しい教会の前を通った 教会の破風にはダビデの星が光っていたが 私はその先に用があるのだった 前方を男が歩いていた 男の右足の先に何か影があった 夕闇と見分けがつきにく […]
2021-05-24 / 最終更新日時 : 2023-08-11 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」より~「水位」 ようやく秋本番といった季節になりましたが、みなさま如何お過ごしでしょうか。秋と言えば読書の秋。新宮市熊野川町出身の詩人・荻悦子さんの詩の世界に浸ってみませんか? 昨年、出版されたばかりの詩集「「樫の火」(思潮社)の中の一 […]
2021-05-21 / 最終更新日時 : 2023-08-01 Tony 荻悦子 荻悦子詩集[「樫の火」より~「祝福の木」 祝福の木 男に抱かれた黒い犬の目が私を射る 目が妙に光り 金色の環が生まれる 雑誌に載っている写真の中の 動かないはずの犬の目が光を放つ 犬は男の腕をす り抜ける ベランダの木の階段を降りてくる 顔を 上げ 光の矢を放ち […]
2021-05-21 / 最終更新日時 : 2021-05-18 Tony 荻悦子 荻悦子詩集[「樫の火」より~「振り子」 振り子 ステンレスの格子戸が降りてきて、ベルが鳴り終わ った 居合わせた人たちは動きようがない 廊下の片側に扉が並んでいる 扉はみな閉ざされて いる フロアから内階段を降りた 踊り場をひとつ 経ると またフロアがあった […]
2021-05-20 / 最終更新日時 : 2023-08-01 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」より~「スープ」 スープ 娘がスープを作ります それは丁寧に本格的に作る のです レンガの壁を背にして おごそかな口調で 翠さんが言った 大きな鍋には既に何かがたぎって いる 翠さんの娘はその中に刻んだベーコンを入れ た 厚みのあるベーコ […]
2021-05-19 / 最終更新日時 : 2023-08-01 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」より~「低く飛ぶ蝶」 低く飛ぶ蝶 狭い側溝の中で 薫色がちらちらした 小さな蝶 小刻みに飛行をくり返し 翅を閉じると 斑点のある灰褐色 側溝の上の生垣に白いアベリアが咲き 明日も低く飛ぶだろう しじみ蝶 黄昏の目で辺りを見ていま […]
2021-05-18 / 最終更新日時 : 2021-05-18 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」より~「家」 家 両親はドーナツ型の家に住んでいる 数日経ってよ うやく気づいた 向い合わせに窓があり あまりに も明るい室内 両方の窓際にベンチが作り付けられ ている 私は何気なくテニスボールをベンチに置い た ボールは転がって 両 […]
2021-05-17 / 最終更新日時 : 2023-08-01 Tony 荻悦子 荻悦子詩集「樫の火」~「春の来方」 春の来方 何人目かの来訪者がくれたのはくすんだピンク色の 缶だった ピンクの缶には絵や文字がなくて 中に カードが入っていた カードには花を咲かせた木が 描かれていた 枝ごとに花の形が異なり 何の花と もつかない花が鈴な […]
2016-03-14 / 最終更新日時 : 2023-07-31 Tony 荻悦子 近況報告~荻悦子 皆様 春が来ました、とは言え、天候不順です。 皆さま、お元気でお過ごしで、ご活躍のご様子を伺い、うれしく存じます。私もおかげさまで元気でいます。詩やエッセイの仕事があり、自分の詩集の原稿整理がありまして、時間を取られてい […]