我がらの新宮弁講座㉔~熊野古道ひとり旅 1
ついに出ましたネ。ご当地演歌「熊野古道」(水森かおり)
♪ 恋に疲れた女がひとり
佇む古道の石畳
涙の川を何度も渡り
日本のどこから来たのやら♪
(↑この歌の歌詞とは関係ありません)
講座風に彼女とともに、古道への旅に出かけてみましょう。
果たして熊野は、この哀れな女を癒すことができるのか。いざ、出発!
【中辺路】*カッコ内は影の声です
列車を何度か乗り継いで、ふと気がつけば滝尻王子。
女 「わ、どいらい山道やの。かなわんよ。誰そ(だそ)、手ぇ引いてくれんかいノ」
(なんなコイツ! 日本のどこそから来たんちゃうんか。熊野の女か!)
女 「いえ、違いますヨ。新宮弁講座のために、ワザと新宮弁をしゃべりやるんです」
(あ、そりゃ、どうも失礼)
急峻な山道のところどころにはワラビやゼンマイ、ウドなどの山菜が芽吹いています。
やがて、峠の茶屋に着きました。
茶屋「姐さん、ゴンパチあるデ。食べていかんし」
(ゴンパチ:和名イタドリ・タデ科イタドリ属。別名はスカンポ。高知や熊野では春の山菜として珍重する)
茶屋のおばあさんが孫をおっぱ(おんぶ)しながら、声をかけます。
女 「どうも、お~きに。ま、可愛らしい子やの~。つあて(よだれかけ)してもろて!
ちょち ちょち あばば おつむてんてん ばっかりこ!」
茶屋「あんたにも、子どもおるんかの?」
女 「いえ、その・・・」と、涙ぐむ。
(なんど、ワケありそうやな)
女 「ちっち こっこ とまれ いやなら 飛んでけ~!」
と、楽しそうに赤子をあやす女の背中は淋しそうであった。
(講師注:このあやし唄をご存知の方は、講座までお教え下さい)
--伏拝王子が見えてきました--
ここまでの道すがら、山のあちこちに里の子どもたちが仕掛けた、くぐつ(鳥を捕る仕掛け)
がありました。伏拝王子からは眼下に熊野川が望めます。大斎の原も。
女 「あれが本宮大社、やっとここまで・・・。熊野の神さま・・・」
音無川を渡り大斎の原へ。女には都でのいろんなことが思い出されます。
神様「こよさ(今宵)は湯の峯温泉にでも、泊まってかんし。めはり寿しもあるしの~」
♪ 離れるほどに
恋しさつのる
心はなんて、あまのじゃく
列車を何度か乗り継いで
熊野古道をひとり旅
切れぬ未練に振り向けば
足を取られる木の根道♪
(作詞/木下龍太郎 作曲/弦 哲也 「熊野古道」1番の歌詞です)
(つづく)