父との想い出~4. 図画・工作

小学校の低学年だったと思う。夏休みの宿題に何か作るという課題が出た。少し考えた末、小さな模型の椅子を作ることにした。近所に木工所があり、いつもそのあたりを遊びまわっていたったので、木屑をもらうのは容易かった。

小さな釘と木工ボンドを使って形を作っていく。釘を打つのは好きで得意なほうだったので、何とか形はできた。しかし、今一つ冴えない。真っすぐ立たない。バランスが悪いし手触りも悪くざらざらしている。点数をつけるとしたらきっと「C」か「D」だろうなと思った。

写生会ではよく入賞したし、図画工作の成績は悪くはなかった。でも、この作品では成績が下がるだろうなと思い始めたとき、親父さんが作品を手に取って眺め始めた。そして、すこしずつ修正し始めた。しばらくして作品を手に取ってみると、素晴らしい作品に仕上がっていた。

表面は、サンドペーパーできれいに磨かれ、つるつると手触り抜群だ。4本の足もぴったりとついてバランスも問題なし。見事な仕上がりなのである。まるで職人の技を見せられたようで言葉が出ない。親父さんは手が器用だった。何をやらせてもうまかった。

さて、夏休みが終わって2学期の始まり。みなそれぞれの作品を提出する。出来栄えは見事で立派だが、気持ちはよくない。自分が作ったものではないからだ。でも誰にも言えない。嘘をついていることの罪悪感でいっぱいだった。先生はきっとお見通しだっであろう!

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