我がらの新宮弁講座⑪~ディープな熊野言葉 3

私たちが、小さい頃から何の疑問も持たずに使ってきた「新宮弁」。成長して都会に出ていった皆さんは、その土地で使われている言葉と故郷・新宮の言葉との違いについてどのように思われたでしょうか?そして、その後、故郷の旧友に会ったり、帰省したときなどにふとついて出る新宮弁。あなたは新宮弁をどう思いますか?

万人が認める新宮弁の達人にして新宮弁研究の第一人者・城かず坊先生が、新宮弁の深淵に迫ります。それでは、よろしくお願いいたします。(編集長・八咫烏)
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【やつす】 お化粧をすること。身ぎれいにすること。
【ふうわりぃ】 みっともないこと。かっこうがわるいこと。
【しこる】 凝ること。入れ込む様子。

ーここは新宮市内のとある花街。やとな(仲居+芸妓÷2)と思しき女が一人、二人と行き交う。今しも、小ぎれいにやつした小百合ママと紀香嬢、菜々子嬢がお茶を引いている。店の名はスナック「熊」ー

紀香 「ママ、不景気やねー。誰ーれも来んデ」
菜々子「昨夜(きのう)も一組だけ。バブルらあったいう話て本当なんやろか?」
ママ 「別に、ええのに。私は日本中、回ってきたけど新宮の街ゃ一番好きン。もうどこへも行かん・・・」
菜々子「店の名前、悪いんとちやうん。『熊』ゆーて」
紀香 「私もそう思うわン。ママ、名前変えよれー」

-首を横に振りー
ママ 「ううん、あの人ゃ気に入ったぁた名前やさか。これでええん・・」
紀香 「ママの彼氏、エエ人やったらしいネ。私の彼らいうたらよー、『お前、いつまでなにヤツしやるんな!。早よ来いよ』やデ。人ゃ、きれいになったろ思いやるのに。ったくゆーたら」
菜々子「イヤやったら別れなーれだ。その気ないくせに。そやけどママ、何で一緒にならなんだん?」
ママ 「ちょっと事情あって・・・」
菜々子「押しかけてったらヨカッタわだよー」
ママ 「そんな、ふうわりぃこと・・・」

-そこへお客がー
全員 「いらっしゃーい!」(これ、新宮弁でなに言うんやろ?)
客  「ママ、いつもの」
ママ 「スーさん、ゴルフの調子ゃどうなぃ?。手作りのクラブ、造ったて聞いたけど」
スー 「あぁ、ちょっとしこってヨー。カッコだけでもつけなのー」
紀香 「今度、連れてって欲しよ。勝浦ゃむつかしさか、白浜か松阪ゃエエわー」
スー 「オー、行こら行こら。ハワイでもオーガスタでもセント・アンドリュースでもどこでも行こら」
菜々子「エッ、ウッソォー。ほんまにやデ」(注)
スー 「ヘンなかっこして来んなヨ。ふうわりぃ言われるド」
紀香 「はいはい、わかったあるヨ。ところでスーさんヨットは?、ヨットもいこれー」
スー 「太地の沖でイルカと遊ぶか。カジキ釣りもエエねー。それより、あとでカラオケ行かんか?」
全員 「賛成ーーぃ!」
新宮の夜は更けていきます。

(次回は考え中です)

(注)・「ウッソー」「ホント」「ヤダー」は80年代に東京で大ブレイクしたギャル語で、今もロングランを続けている言い回しですが、新宮では私の知る限りでも60年代に「女子」が盛んに使っていました。もっと前から使われていたのではないでしょうか。「うっそぉー」「ホンマに」「いやーよ」てな感じでした。「東京では言わんのやナー」と思っていたら、キャピキャピ風が使い出したので、ややビックリでした。「ウッソー」のアクセントは新宮ではしり上がり、東京ではしり下がりです。

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