氏と姓の成り立ち

ずっと以前から気になっていた名字の由来について、何冊かの本を読んで調べてみた。まずは基本的なことでその成り立ちから、そして、近畿地方、特に和歌山県・熊野地方に多い名字について書いていきたい。

氏」と「姓」
現代の日本では、日本人の名を、「名字+名前」で表している。「名字」が家の名を表し、「名前」が個人の名を表すという構造になっている。

この「名字+名前」を「姓名」というが、もともと「姓」と「名字」は別物だった。「姓」は5世紀ごろ、天皇が自身に従う豪族に対し、「姓(かばね)」を与えたことに始まる。姓は豪族の地位を表すもので、豪族や貴族たちは「臣(おみ)」や「連(むらじ)」といった呼び名をもった。

ところが同じ格付けのものはすべて「連」と呼ばれるため区別がつかなくなる。そこで姓の頭に「氏(うじ:親族や血筋を表す名称)」を付けて呼ぶようになった。「物部連」「平朝臣」などと呼ぶことで個々の区別をつけたのである。

氏姓は最初は天皇に従う者が名乗り、どんどん広まっていった。7世紀末には庶民にも氏姓が与えられるようになった。

「名字」の登場
一方、「名字」は、14世紀ごろに、「家」を継承する名称として定着したものである。平安時代も末になると、出自を同じくするものが各地に増え、氏を区別する必要が生じてきた。そこで、在地領主が居住地や官職に由来する名称を、個人を特定するものとして名乗り出した。それが次第に広がり、やがて家を表す名称となった。

そして、フルネームとして、「家」を表す名字と「出自」を表す氏と姓の両方を使って表す方式ができた。例えば「織田上総介平朝臣信長」というふうに表すのである。この場合、「織田」は名字、「平」が氏、「朝臣」が姓である。(「上総介」は官名。)

このように、もともと名字と姓は違うものだったのだが、現代の用法としてはともに家を表す名字を意味する言葉として用いられている。

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