新語・難語~ブロックチェーン

最近よく耳にするブロックチェーンという技術は、「インターネット以来の技術革新」と表現されるほどの可能性を秘めているという。ブロックチェーンとは、いったいどんな技術なのだろうか。そう思って調べてみてもビットコインや仮想通貨の文脈で解説されているものが多く、「それで結局、ブロックチェーンって何なの?」という疑問はなかなか溶けにくい。

ブロックチェーンとは、「参加者の中に不正を働く者や正常に動作しない者がいたとしても正しい取引ができ、改ざんが非常に困難で、停止しない、多数の参加者に同一のデータを分散保持させる仕組み」だという。 ただし、現時点でもブロックチェーンの定義は定まっているとは思えず、時と場合、人によってさまざまな解釈でこの言葉が使われているように思う。

国内では、日本ブロックチェーン協会が2016年10月に公表した以下の定義が頻繁に参照されている。

ブロックチェーンの特徴
ブロックチェーンの特徴は、主に以下の4点に絞ることができる。
・ 改ざんが非常に困難
・システムダウンが起きない
・取引の記録を消すことができない
・自律分散システム
ブロックチェーンは、「ハッシュ」や「電子署名」という暗号技術を用いることで、データの改ざんを容易に検出できる仕組みを持っている。 また、ブロックチェーンでは不特定多数の参加者が取引を行うが、多数の参加者(全参加者とは限らない)が全員の取引履歴のコピーを記録しているため、一部のコンピュータがダウンしても、残りの多数の参加者が記録を保持し続けるため、システム全体がダウンすることはない。

この取引履歴のコピーは削除もできないため、一度記録された取引の記録は消えずに証拠として残り続ける。このように、多くの参加者でデータを分散して持つシステムを分散システムと呼ぶ。 今までの多くの分散システムにはシステムの中央となる管理者が存在していた。

ところがブロックチェーンは、全ての参加者が自律して取引履歴をコピーし続けている。これは自律分散システムと呼ばれ、ブロックチェーンの大きな特徴のひとつと言える。この自律分散システムの、不正や改ざんを許さず、公正な取引の履歴を安定して記録し続ける特性は、仮想通貨を筆頭とした高い信用度を求められる取引には欠かせないものだった。

ブロックチェーンとデータベースの違い
「ブロックチェーンはクラウドのデータベースとそれほど変わらないのでは?」と感じるかもしれない。それは半分正しく、半分間違っている。確かにクラウドのデータベースは、複数のコンピュータに分散されており、バックアップも取られることからエラーや改ざんの修復は可能だ。また、大手のサービスならば安定性も高いと言える。
しかし、その仕組みは中央集権的であり、サービスを提供する管理者の存在を必要とする。管理者がサービスを停止させればデータベースの中身は消失するし、管理者の都合によってデータを抹消される可能性もある。また、万一、管理者に悪意があればデータの中身を改ざんできてしまう。

一方で、ブロックチェーンは、たとえサービス提供者であっても記録されたデータの改ざんや消去はできないし、参加者が自身の取引履歴を消すこともできない。この点がブロックチェーンとデータベースの最大の差だ。この特性があるために信用度の低い無名のサービス提供者であっても、通貨などの取引を任せることができると言える。

ブロックチェーンのデータは削除できない
ブロックチェーンと仮想通貨の関係 ブロックチェーンは安心安全だから通貨の取引に使われる、ということは理解できたと思うが、ここで一度、ブロックチェーン誕生の背景を整理しておこう。 そもそもブロックチェーンは、2008年にコンセプトが発表され、2009年に取引が開始されたビットコインを支える技術として世に登場した。

ビットコイン、そしてブロックチェーンの生みの親と言われる「サトシ・ナカモト」氏によりもたらされた、既存技術の組み合わせによる技術革新である。 サトシ・ナカモト氏は、政府による度重なる経済への介入を嫌い、誰も介入できず、決してダウンせず、公正に取引を記録する、新たなインフラを作るためにビットコインを生み出したと言われている。そして、その土台となる技術こそがブロックチェーンだった。

ブロックチェーンでできること
さて、ではブロックチェーンは具体的に何がそこまで凄いのだろうか。「インターネット以来の技術革新」とまで言われているが、いくら何でも煽りすぎだろうと思う方も多いはずだ。その答えを知るために、ブロックチェーンを活用してできることを想像してみよう。

ブロックチェーンができることを端的に表すならば「取引の公明な記録を残すこと」だ。そしてこの「取引」の内容は、何も仮想通貨や金融商品に限らない。証券取引や保険契約、送金に資金調達などの金融に関する取引はもちろん、シェアリングサービス、食品のトレーサビリティ、著作権管理、美術品の所有権、医療サービス、果ては行政手続きや投票まで、公明で透明な記録として残すことができる。記憶に新しい公的な情報の紛失や書き換えなども、一度正しくブロックチェーンに記録してしまえば、書き換えのない公明な記録として残すことができる。 また、パブリックチェーンは管理者を必要としないため個人情報が中央集権的に集まることもないし、改ざんが困難なため見知らぬ個人間の取引であっても、安心して行える。 ブロックチェーンが浸透しきった世界では、利用者はその技術が使われていることを意識することすらなく、書き換えも不正もない透明な取引を行えるようになるだろう。我々にとってのインターネットと同様に、あって当然のインフラとして存在しているはずだ。

ブロックチェーンを活用できるサービスの例
どうやらブロックチェーンはいろいろなことに使われそうだ、ということはわかった。では具体的に、どのような産業やサービスで活用できるのか。経済産業省は「ブロックチェーン技術を活用したサービスに関する国内外動向調査」報告書概要で、ブロックチェーン技術活⽤のユースケースとして、次のようにまとめている。

ブロックチェーンを行政サービスに活用した具体例
エストニアは「デジタル先進国」と呼ばれている。1991年にソビエト連邦から独立した人口130万人強の北ヨーロッパのこの小国は、「e-Estonia(電子国家)」というスローガンを掲げ、官民を問わずITを積極的に活用している。そんなIT先進国エストニアは、世界で最も早くブロックチェーンを行政サービスに導入した国のひとつとして注目を集めている。

現在、エストニアでは納税や投票、結婚や離婚の手続き、土地や法人の登記、パスポートの発行までもがインターネットで完結する。銀行取引や保険はもちろん、医療情報も電子化されている。驚くべきことに、すべての行政サービスのうち99%がインターネットで完結するという。

さらには、エストニアを一度も訪れたことのない外国人でもインターネットで「電子居住者」としての登録申請が可能で、この電子居住者の制度が外国人起業家の誘致の鍵となっている。 エストニアの電子政府は「利便性」と「透明性」をポリシーに掲げ、これらの行政手続きの記録にブロックチェーンを活用しており、国そのものがブロックチェーンスタートアップだと言われるほどに力を入れている。まさに近未来国家と言えるだろう。

ブロックチェーンをマーケットプレイスに活用した具体例
インターネット上のフリーマーケットサイトやオークションサイトで個人同士が売買をする仕組みは、今や巨大な市場となっている。このようなマーケットプレイスでもブロックチェーンの活用が進んでいる。

アメリカのOpenBazaar はその代表例だ。ビットコインを使った決済に対応したOpenBazaarは、出品者と購入者がサイト上で直接取引を行うタイプのマーケットプレイスだが、ブロックチェーンを活用することで、匿名性を担保しつつ安全な取引を実現しているだけでなく、サービス利用のための手数料がかからない。こうしたブロックチェーンを利用したマーケットプレイスはユーザーのニーズに合致しているため、今後も増え続けると言われている。

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