フランスあれこれ30~パリの屋根裏部屋

今から50年ばかり前の思い出です。私がパリに赴任した直後同僚の一人が屋根裏の書庫に書類を取に行くと聞いて私も良い機会とばかり一緒させて頂きました。
事務所はコンコルド広場の近く、超一流のホテル・クリヨンや海軍省が広場に面し、中央をまっすぐ北にマドレーヌ寺院を望むなど一等場所の一角にありました。見事に整然と並ぶオフイス街です。
大きな玄関があり、入ると中庭があり、右に事務所への入り口ですぐ階段、それと手動式クラッシックなエレベーターがあります。また入り口の反対側は管理人(コンセルジュ)の部屋になっています。そして階段やエレベーターは5~6階程度の事務所或いは住宅までで屋根裏には通じていません。屋根裏に上がるには管理人室の奥にある別の小さな裏階段を利用します。途中各階での出口はなく屋根裏まで直行です。薄暗い豆電球で途中ところどころにあるスイッチを入れないと消えて全くの暗闇になります。荷物をもって、或いはお年寄りはなどと考えると如何にも理不尽な事と思わざるを得ません。
さてやっと最上階に到着、ドアを開けてフロアに出ると別世界です。石造りの建物の最上階は完全な木造様式!でビックリです。しかも比較的新しい木材と言う印象さえ持ちます。すぐのところに書庫があり開けて中に入りましたがこの部屋は窓もなく真っ暗、倉庫しか使いようがないという事でしょう。必要な書類を持ち、この機会にちょっと見学しようと考えで廊下を一周することに。垣間見た部屋も木造で内装もなく全く貧弱と言わざるを得ない雰囲気です。部屋の中央付近に小さな窓が一つ、これが明り取りでしょうか。左の間取り図がその一例です。ご覧の通りこの部屋にはトイレが見当たりません。廊下の片隅に共用トイレがあります。1.5m四方程度で中央に一つ穴が開いているだけの簡単なものです。街中のカフェーなどで見かけるのと同じものです。どこかで水の音がしていたり、ちょっと所用でドアを開けたままの部屋があり、この機会とばかり静かにそして恐る恐る中を覗かせて頂いた次第です。ただこの一回だけが私の見た屋根裏部屋の最初で最後の機会となりました。
さて廊下を曲がって、それは丁度その時のことです。どこかの部屋からか静かにすすり泣く女性の声が聞こえたのです。私共の探索はその瞬間にストップしました。私の脳裏をかすめたのは誰か身内の訃報が届いたのか、それとも自分の不幸を嘆いていたのか、脳裏をかすめたのは昔読んだフランスの小説「レ・ミゼラブル」でした。
室内の雰囲気を伝える写真をネットで探しましたが適当なものは見つかりません。やはり時代も変わり昨今ではすっかり内装も行き届き白壁やインテリアなど近代化されています。そう言えば一度だけ当時完全に内装された屋根裏部屋を見たことがあります。それは超一流ホテルに泊まった日本からのVIPに招かれて部屋に伺った時です。立派なリビングにつながる階段で屋根裏の寝室に通じていたのです。白壁に額も掛かり、窓越の素晴らしい見晴らしにもかかわらず私にはやはり屋根裏と言う印象が強かったことを思い出します。
屋根裏の話のついでに地下室の話を追記します。地下なので窓はありません、暗い廊下にドアが整列しています。私が借りた住宅にも地下室がありました。間口3~5メートル、奥行き10メートル位でしょうか。全て物置で、日常必要のないものなど雑物を保存しています。ワインの貯蔵や一時保管に適していることは言うまでもありません。

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