高尾山体験記(4)天狗信仰

一般的に、天狗は善悪両面を持つ存在で、妖怪でありながら神格化されている。山伏修行の象徴であり、自然の霊力を体現する存在である。

高尾山の天狗信仰は、修験道・飯縄大権現信仰と深く結びつき、山の守護神として神格化された存在。大天狗と烏天狗が薬王院を中心に祀られ、除災開運・魔除け・戦勝祈願などのご利益をもたらすとされ、戦国武将から庶民まで広く信仰されてきた。

天狗信仰の背景
高尾山薬王院は奈良時代(744年)、聖武天皇の勅令で行基によって開山された。 南北朝時代に飯縄大権現が祀られ、修験道の根本道場として発展。山伏修行の場となり、厳しい修行を経た行者が「天狗」と同一視されるようになった。天狗は飯縄大権現の眷属(従者)とされ、霊力をもって人々を守護すると信じられている。

天狗伝説
高尾山は、山伏の修行の場だった。江戸時代、遭難者や怪我をした人達が山伏の格好をした人に助けられたという話から、山伏=天狗とみなされ天狗が人々から親しまれた。

天狗の種類と役割
大天狗:赤い顔に高い鼻を持ち、山の守護神として威厳を示す存在。  
小天狗:青い顔に烏の嘴を持ち、別名烏天狗とも言われる。修行者を守り、魔除けの力を持つとされる。  
両者とも薬王院境内に祀られ、参拝者を見守る象徴的存在である。
戦国武将と天狗信仰

上杉謙信や武田信玄などの戦国武将は、飯縄大権現と天狗の力を篤く信仰した。兜や旗に飯縄権現を描き、戦勝祈願を行った記録が残っている。天狗は「戦の守護神」としても崇められ、武士の精神的支柱となた。

天狗伝説と民間信仰
たこ杉伝説 :参道の大杉が天狗の力で道を開くように身を縮めたとされ、開運の象徴になっている。
天狗の木伐り:夜に大木が倒れる音がするが、翌朝には何も変わっていないという怪異譚。
天狗は「山の霊気の化身」として、自然への畏敬と信仰を象徴している。

ご利益と現代の信仰
除災開運・災厄消除・招福万来などのご利益があるとされ、今も多くの参拝者が訪れる。
境内には天狗像や天狗ゆかりのスポットが点在し、参拝者は天狗の力を感じながら祈りを捧げる。
名物「天狗焼」など、現代では観光と信仰が融合した文化も育まれている。

まとめ
高尾山の天狗信仰は、修験道の厳しい修行と飯縄大権現信仰が融合した独自の霊的文化である。天狗は単なる妖怪ではなく、山の守護神・人々の守り神として神格化され、戦国武将から庶民まで幅広く信仰されてきた。現在も薬王院を中心にその信仰は息づき、伝説やご利益を通じて多くの人々を魅了し続けている。

 

日本三大天狗
尚、日本三大天狗は「迦葉山(群馬県)」「高尾山(東京都)」「鞍馬山(京都府)」の三霊山に祀られる天狗を指し、それぞれが地域の修験道や信仰と結びつき、山の守護神として崇められている。  
迦葉山(群馬県沼田市)  
正式には「迦葉山龍華院弥勒寺」。  日本一の大天狗面(高さ約6.5m、鼻の長さ約2.8m)が奉納されていることで有名。「交通安全身代わり大天狗」など複数の大天狗面があり、沼田まつりでは天狗みこしが登場する。    
鞍馬山(京都府京都市)  
鞍馬寺に「鞍馬天狗」が伝わる。牛若丸(源義経)が鞍馬天狗から兵法を学んだという伝説が有名。  
修験道と密教の霊場であり、天狗は武芸・知恵の象徴として信仰される。  

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