「春夫詩句を拾う!!」(10)

昨秋より熊野新聞に、そしてその後、佐藤春夫記念館ブログに掲載中の、辻本館長のブログ「春夫詩句を拾う!!」を、許可を得て、当熊野エクスプレスにても連載することになりました。
どうぞお楽しみください。
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ヴィッカスホールの玄関に

咲きまつわつた凌霄花(りょうせうくわ)

感傷的でよかつたが

今も枯れずに残れりや
(一九二八年一月「酒、歌、煙草、また女」『佐藤春夫詩集』所収)

この詩のサブタイトルには、「三田の学生時代を唄へる歌」とある。新宮中学を卒業して上京、一高受験をめざすが挫折、刷新されたばかりの慶應義塾予科の文学部で学ぶことになった。
「ヴィッカスホール」は、三田に在職していた外国人教師ヴィッカスの邸宅。春夫が学んだ頃は、文学部の教室として使用していた。
「凌霄花」はノウゼンカズラ。中国渡来の植物で、夏から秋にかけて橙色や赤色の美しい花をつける。つる性の落葉樹で、三~六メートルほどの高さにもなる。花は一日花で、次々と咲き続ける。花ことばは、「名声」「名誉」「栄光」など。
春夫が愛好した植物の一つで、自邸の庭にも植え、「三田の学塾の思ひ出のためであつた」と記している。春夫の戒名の一部に「凌霄院殿」と採られているほどである。

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