中上健次没後30年に、森本祐司氏大いに語る!

中上健次没後30年にあたり、熊野大学創立などに深く関わってきた森本祐司氏がネットマガジン「ウォーカープラス」の取材を受けて語った内容はこちら。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6a15903f5cf3649ba0ceefdaf4679c875e0510c3

その後、熊野エクスプレスの独自取材でインタビューをお願いしたところ快く引き受けてくれ、その深遠なる思いをさらに深く語ってくれました。
(以下、本人の原稿のまま)
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ネットマガジン「ウォーカープラス」の取材を受け、上手にまとめてくれたのですが、後半部分で、私の意図と少しニュアンスが違うように感じ、このような機会をいただきました。
記事中、中上さんの問い「今の時代に価値があるものは何だと思う?」という箇所ですが、以下のような事でした。ある飲み会での出来事でした。私に「森本よ、近代合理主義の中で最も価値あると感じる物は何だ? それはな、【時間】なんだ。だから大金持ちほど時間がかかる船旅をするだろ。それから考えれば、熊野が都会から遠い、交通が不便だというけれど、そこを逆手にとればいいんだ。遠くても行きたいと思わせることをやる、思わせる土地にすることが大事」

「熊野が相手にするのは東京ではない。東京は消費だけの街、創造する街ではない。むしろ我々が熊野を伝えていく相手はニューヨークであり、南アフリカなど世界なんだ」と。当時南アフリカは人種差別的なアパルトヘイト政策をとり、そんな中でも黒人の多くが望む黒人政権が出来ようとしていた時期でした。

新型コロナ前はまさにその言葉通り世界から熊野にツーリストが押し寄せました。しかも特段の施設があるわけでもない熊野古道という道を歩きに。

一般に我が国の他の世界遺産は、登録された直後は賑わっても数年経てば来訪者数が右下がりになるところが多い中、熊野古道は右肩上がりでした。

今思うと中上さんの言葉は、未来予測、まさに予言といってもよい言葉です。あえて言うなら、「世界遺産熊野古道」と言われなければただの山道です。日本の他の世界遺産の多くが、何らかのランドマークとも言える建造物や景観を謳っています。

熊野も山々が連なる景色も素晴らしい。寺社仏閣は立派な物があります。けれど山道には世界遺産だといえるほどのランドマーク的なものは一切ないのです。そこを歩くことで人は己の来し方行く末を考える、時には瞑想もする、また景色も刻々と変わる。その時々の自分を見つめながらの山道行、その時の心情によって景色も気持ちも変化するはずです。そんな理由で熊野古道はそもそもリピーターが多いのではと推測しています。

最後に「熊野新宮は、何もないけど何でもある」と申し上げたい。見つめる側の思考や心情によっていかようにも観られる場所であると強く思います。知れば知るほど奥が深く、歴史文化が重層的にあり、住民も個性的。

それぞれ人を捉えて放さない妖しい魅力もあります。知らなければ通り過ぎるような街角にも物語があります。観光とは「光を観る」と書きますが、むしろここでは「熊野の色々な闇や人に塗(まみ)れて欲しい」と思うのは、私の偏った勝手な思いでしょうか。

(取材:ヤタガラス)

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