佐藤春夫記念館
佐藤春夫記念館は、春夫(1892-1964)が東京で住んでいた自宅を平成元年11月にこの地に移築したもの。原稿や愛用した品々が展示され、居間も生前同様にして公開されています。春夫の作品にみる「夢見るような」雰囲気をもった家です。
佐藤春夫は、明治25年(1892年)和歌山県東牟婁郡新宮町(現・新宮市)に生まれました。医師である父・豊太郎が文芸にも造詣が深くまた、当時木材業で栄えた新宮には大石誠之助、西村伊作、沖野岩三郎ら先進的な文化人が活発に活動していました。そうした環境の中で春夫は文学少年として成長していきました。
明治43年(1910年)、中学卒業と同時に上京。慶應義塾大学予科文学部に入りますが、のちに中退。雑誌「三田文学」「スバル」などに詩歌を発表、また「西班牙犬の家」を発表してその才能が注目されつつありましたが、大正7年(1918年)、谷崎潤一 郎の推挙により文壇に登場、以来『田園の憂鬱』『お絹とその兄弟』『美しき町』などの作品を次々に発表してたちまち新進流行作家となり、芥川龍之介と並ん で時代を担う2大作家と目されるようになりました。
その著作は多様多彩で、詩歌(創作・翻訳)、小説、紀行文、戯曲、評伝、自伝、研究、随筆、評論、童話、民話取材のもの、外国児童文学翻訳・翻案などあらゆるジャンルにわたっています。昭和39年 5月 6日、自宅でラジオ録音中、心筋梗塞のため72歳で死去しました。