オーストラリアワイン
オーストラリアワインの歴史が始まったのは1788年。英国海軍アーサー・フィリップ大佐によってシドニーにワイン用ブドウが持ち込まれました。その後、1825年には、「オーストラリアのワイン用ブドウ栽培の父」と呼ばれるジェームズ・バズビーによって本格的なブドウ園が開設され、ワイン生産が広まっていきました。当時のオーストラリアで生産されていたのは、甘口のデザートワインが主でしたが、徐々にテーブルワインの方が盛んになり、近年では、最新技術の導入などにより、世界でも指折りの高級ワインも生産されています。
また現代のオーストラリアで見逃せないのが、自由な発想で既成概念を打ち破る新世代のワインメーカーを中心に巻き起こっている「ナチュラルワイン・ムーヴメント」。オーガニックやビオディナミ農法で栽培され、自然発酵で亜硫酸をごく少量あるいはまったく使わないで造られる「ナチュラルワイン」が若い消費者を中心に人気を集め、オーストラリアのワイン文化に新しい側面を与えています。
オーストラリアワインの代表品種と言えば、黒ブドウはシラーズ、白ブドウはシャルドネが有名。スパイシーかつタンニンが豊富で力強いコクを持つシラーが、オーストラリアでは「シラーズ」と呼ばれており、断トツで一番多く栽培されています。また、シャルドネも白ブドウの栽培面積の半分を占めており、テーブルワインから高級ワインまで多く造られています。
その他にも、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワール、リースリングやソーヴィニヨン・ブランなど、多様な国際品種が存在。また、20世紀末から21世紀にかけて、消費者が求めるワインスタイルのトレンドの変化に伴い、テンプラニーリョやネッビオーロ、ヴェルメンティーノやグリューナー・ヴェルトリーナーなどの「オルタナティブ品種」も近年増え続けています。
オーストラリアワインの主な産地
日本のおよそ20倍もの国土を有するオーストラリアでは、主に6つの州でワインが生産されています。
まず1つ目は、アデレードを州都とする 南オーストラリア州 。オーストラリア全体の半数以上ものワイン生産量を担う国内最大の産地です。2つ目はシドニーを州都とする ニュー・サウス・ウェールズ州 。オーストラリアワイン発祥の地として名高い歴史ある産地です。さらに3つ目の ヴィクトリア州 は、フランスのモエ・エ・シャンドン社が設立した「ドメーヌ・シャンドン」があることでも有名です。そして、オーストラリア南西部に位置する 西オーストラリア州 、北東部に位置し、ブリスベンを首都とする クイーンズランド州 は、生産量は少ないながらも高品質なワインを数多く生み出す銘醸地です。最後の6つ目は、オーストラリア大陸の南に浮かぶ自然の宝庫、 タスマニア州 。冷涼な気候を活かした、上質でエレガントなワインが魅力です。
オーストラリアワインの特徴
産地によって多彩に表情を変えるオーストラリアワインをマスターする上で知っておきたい、気候特性とワイン法について見ていきましょう。
■気候特性
世界で6番目に大きい国土面積を誇るオーストラリアは、 熱帯~温帯 の気候帯に位置しており、地方によって気候の特徴が異なります。ワイン用ブドウの栽培がさかんに行われている主な産地は 南緯30度~40度前後 のオーストラリア南部にあたり、ブドウ畑は 比較的冷涼な沿岸部に集中 しています。
オーストラリア南部だけを見てみると、南オーストラリア州、ニュー・サウス・ウェールズ州、ヴィクトリア州を含む南東部と、西オーストラリア州のある南西部においては、 温暖な地中海性気候 が特徴的で、 水はけのよい石灰質の土壌 を有しています。また、オーストラリア大陸の南に浮かぶタスマニア州は、南極海からの風を受ける 冷涼な海洋性気候 が特徴的で、 火山由来の火成岩が主な土壌 です。
■地理的呼称(GI)について
GI (Geographic Indications)とは、 オーストラリアにおけるワイン法のうちのひとつ です。ヨーロッパへのオーストラリアワインの輸出が増加したことを受け、1993年にオーストラリア・ワイン・ブランデー公社によって制定されました。これにより ラベルの表示内容への信憑性が確保 されています。GIとして登録されている産地であれば、 どの産地であってもそこで収穫されたブドウが85%以上含まれていることが基本的な条件 で、クリアしたワインだけがラベルへの産地記載を認められています。
GIは、AOCなどといったヨーロッパにおける原産地呼称制度とも似ていますが、ブドウの栽培方法やワインの醸造方法までは細かく規定されていません。そのため比較的自由なワイン生産が可能であり、ヨーロッパの醸造家が新しいスタイルのワイン造りに取り組むためにオーストラリアで拠点を構えるといったケースもあります。