次なる出会いは
子供の頃、父の膝にすわり少しだけ味見をさせてもらってからは、なかなかワインに出会う機会は訪れなかった。少年時代も父がワインを飲んでいた記憶はないので、飲んでなかったのだろう。したがって、お相伴にあずかることもなかった。大学に入ってからもワインは殆ど飲むことはなく、もっぱらビールかウイスキーだった。しかし、一度だけどういう風の吹き回しかワインを飲んだのだが、その飲んだものもあまり旨いとは思わなかった。そして、そのワインのせいではないが、飲んだあと大騒ぎをして走り回ったため気分が悪くなったという悪い印象だけが残った。多分その前にビールやらを飲んで飲み過ぎていたからだろう。
就職してからも、パーティーなどでは必ずワインが用意されているが、1杯くらいでやはり飲むのはビールの方が良かった。ただ、上司の一人にモーゼルワインが大好きな人がいて、その影響で自分でも時々酒屋に行って鬚文字で書いたラベルのモーゼルワインを探して買って飲むことはあった。当然酒屋の棚には今ほどではないにせよフランス産・イタリア産はじめいろんな国のワインが並んでいたはずだが、そちらには手が伸びなかったのが今思えば不思議なこと。
モーゼル、これなら少し酸味は強いがさわやかな感じで飲めると思った。今思えばやや甘のものが多かったように思う。また、ある時、取引先でもあったハンガリーの方からボトルを一本頂いたことがあり、それがかの有名なトカイワインだったが、これは琥珀色をしていて凄く甘かった。甘さから昔舐めたポートワインを思い出した、ワインというのはやはり甘いものかと。頂いたトカイワインはデザートワインであることを後で知ったのだが、当時は猫に小判だったかもしれない。一体どういうのが本当のワインなのか分からないまま時間は過ぎていた。