「春夫詩句を拾う!!」(8)

昨秋より熊野新聞に、そしてその後、佐藤春夫記念館ブログに掲載中の、辻本館長のブログ「春夫詩句を拾う!!」を、許可を得て、当熊野エクスプレスにても連載することになりました。
どうぞお楽しみください。
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うまれし国を恥づること。
古びし恋をなげくこと。
否定をいたくこのむこと。

(一九十一年四月「小曲二章・病」)

上京直後の心境をさらっと一筆(ひとふで)書きのようになぞった作品。「うまれし国を恥」じるのは、都会に出た田舎人の共通したコンプレックスであろう。コンプレックスは、何事に対しても、都会人には負けまいとする闘争心をも生み、否定を好む「反骨心」の土壌をも形成する。かてて加えて、「うまれし国」は、この時「大逆事件」という未曽有(みぞう)の大事件に遭遇(そうぐう)していた。それは、現在からみて「恥じること」などではないのだが、当時の時代状況からすれば、「恥じ」に通じると理解できるし、そこから春夫が抜け出すには、さらに時間を要した。「新宮出身を身の内に隠す」ことから、春夫は文学的な出発をしたとして、その態度に疑義(ぎぎ)を語ったのは、五〇年後に生まれた中上健次である。

 

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