_伊勢街道巡り旅 小耳情報6.~すりあわせ技法
式年遷宮に合わせて20年ごとに架け替えられる宇治橋の工事には、船大工が持つ特殊な技術が用いられる。宇治橋は、文化的象徴性と木造建築技術の粋とが融合した存在だと言える。ここでは、すりあわせ技法について紹介する。
すりあわせ技法
「すり合わせ」とは、和船建造における板同士の接合面を密着させ、水漏れを防ぐための重要な技法。ノコギリを使って板の断面を擦り合わせ、さらに「木殺し」で締めることで、水密性を高める。
すり合わせの基本工程
板と板の接合部から水が浸入しないようにするための和船特有の工法で、船体の耐久性を左右する。
使用する道具
– 「中目(ちゅうめ)」 :目の粗いノコギリで最初に荒削り
– 「こば」や「13目」 :中間仕上げ用のノコギリ
– 「16目」 :目の細かいノコギリで最終仕上げ
→ 目の粗いものから細かいものへと段階的に使い分ける。
作業方法
1. 板同士を仮に合わせ、わずかな隙間を残す
2. ノコギリを引いて接合面を擦り合わせ、曲がりや凹凸を整える
3. 板のカーブや形状を完全に一致させる
木殺し(きごろし)
– すり合わせ後、接合面を金槌で叩いて圧縮する工程。
– 船が水に浸かると木が膨張し、板同士がより密着して水漏れを防ぐ。
– 木の復元力を利用した、自然素材ならではの知恵。
地域的なバリエーション
– 瀬戸内・関東以西:棚板造りの船で広く用いられる技法。
– 日本海沿岸(富山など):すり合わせに加え、木製カスガイ(チキリ)、木栓タタラ、漆を接着剤として使用する独自の工法も発展。
– 地域ごとに工夫があり、すり合わせは共通基盤として存在。
技法の意義
– 水密性の確保:釘や接着剤に頼らず、木材の性質を活かす。
– 職人技の象徴:板の曲線を完全に一致させるには高度な経験と感覚が必要。
– 持続可能性 :自然素材を活かし、修理や再利用が可能。
すり合わせは単なる接合技術ではなく、木の呼吸や復元力を計算に入れた「生きた工法」である。船大工は木の性質を熟知し、道具を使い分けながら板を一体化させていきた。まさに日本の伝統的造船技術の核心と言える。


