「春夫詩句を拾う!!」(7)

昨秋より熊野新聞に、そしてその後、佐藤春夫記念館ブログに掲載中の、辻本館長のブログ「春夫詩句を拾う!!」を、許可を得て、当熊野エクスプレスにても連載することになりました。
どうぞお楽しみください。
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この栄え この誉(ほま)れ、この喜び

九泉(きうせん)の下、先師(せんし)に父母に愛弟に

伝へんすべなきぞ恨(うらみ)なる

世に乱(らう)がはしく

テレビジョンとラジオとはあれど

(一九六〇年十一月「文化勲章拝受の日に」)

春夫は、即興で詩を作ることが多かった。掲出の詩句も、十一月四日の「毎日新聞」に掲載されたもので、文化勲章受賞式に臨(のぞ)んだ感慨を即座に述べたものである。
詩は「菊花薫る明治の佳節、文化の日 / 夜来(やらい)の雨名残(なごり)なく秋は晴れ」で始まる。十一月三日は明治天皇の誕生日で祝日、戦後は「文化の日」となった。
「先師」とは亡き先生方、与謝野寛、晶子夫妻や生田長江(いくたちょうこう)等を指しているのであろう。父母や愛弟とは、若くして亡くなった弟秋雄である。     
「九泉の下」とは墓に眠る、の意で、この「誉れ」を、亡くなった人に伝える「術(すべ)がない」、方法がないのはいかにも無念である、の意。この時は北海道に弟夏樹が健在であった。
世はいわゆる「六〇年安保」で、政情が騒然とした年であった。テレビとラジオとが、しきりに報じている、いかにも春夫らしく文明批評の言で結んでいる。

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