移住を考える⑰~若者の移住に期待!

生まれ育った新宮が危機的状況だと教えてくれた友人がいる。何のことかと思いきや、人口減が激しく2040年には2万人を切ってしまうという推測も出ていると聞く。新宮市に限らず日本全体が少子高齢化の波に突入して久しいが、政府も何ら具体的な策が打ち出せていない状況だ。

長年、新宮を離れて暮らしてきて正直故郷の人口減問題を考えたこともなかった。しかし、たまに帰省して丹鶴町や仲ノ町の商店街を歩いてみると確かに降ろされたシャッターが目立つ。自分が小学校・中学校の頃、映画を見にいったり買い物に行っていたあの活気があった商店街の面影は今はない

数年前に熊野古道が世界遺産として登録されて以降、海外からをも含めて観光客は増えているらしいが、素通りする人が多く、市内に宿泊する人はさほどではないとも聞いている。このままではこの町はいったいどうなってしまうのか真剣に考えなければならないと思う。

そんな中、嬉しいニュースが飛び込んできた。若者が新宮を気に入って移住をしてくれているという。友人からそんなニュースを聞いて思わず頬がゆるんだが、真っ先に頭に浮かんだのは、人口減を食い止めて町を活性化させるための方策のひとつとして取り組むべきテーマではないかということだ。勿論短期間では難しいので、長期的視野にたっての施策が必要なのは言うまでもない。

我々団塊の世代が「移住」と聞くと、定年後、都会での長年の暮らしに別れを告げてどこか田舎に行き畑仕事など自然と触れ合える場所を求めてするものという印象がある。ところが、最近は少し事情が違ってきているらしい。統計を見ても最近は比較的若い世代の移住が増えているようだ。

ここで紹介する一志新さん・京子さんご夫妻は長野県飯田市からの移住で、昨年末から準備を整え、今年の3月から新居での生活を始めたばかりだという。「3年ほどかけて西の方を回り、家を探しました。もともと田舎暮らしをしたいと思っていたので」と話す。

子供のころ市内に住んでいた自分にとっても当時さらに田舎だと思っていた(笑)「高田」という場所を気に入ってくれたと聞くと、余程田舎が好きな人なのだと思うが、今、自分がこの歳になって田舎はいいと思うようになってはじめてその気持ちがわかる気がするのだ。

新さんは「全てが精神や肉体を成長させてくれるストーリーだったのかと。この家に大切に住んでいきたいです。毎日が楽しくて、何でもうれしい方向にと捉えられれば」と考え方がしっかりしていることに驚く。

京子さんは「何かに呼ばれてきたような気もしています。高田は川の水がとてもきれい。暮らしだして、人がすごく魅力的と感じました。きらきらしていて、みんなが同じ、純粋で素直な気持ちを持っているよう」と最大限の誉め言葉をくれている。

「水がきれい、人がすごく魅力的、きらきらしている」こんな言葉を聞くと涙が出るほどうれしくなる。こんなにも感激してくれる人がいることを知ったら、地元の人間としてはただ喜んでいるのではなく、今後もこの気持ちに恥じない町を保ち続けていくことを目指さなくてはいけないであろう。

新聞社によるインタビューで、今後取り組んでみたいこと尋ねられると答えは次のようなものだったという。
「植林地が増えている近年だから、多様性がある雑木を植えるプロジェクトをしたいです。雑木の山は豊かで美しい。地球に借りていたものを返していくという感覚。あとは音楽の活動もしたいので、そういうことも。もちろん畑もやっていきたい」と話していたそうだ。

実に頼もしい若者が来てくれたものだ。

人間が持っている自然への憧れや思いは、いつの時代でも、年齢にも関係なく同じである。そして熊野の地には悠久の歴史が育んだ、人を魅了して止まない深いものがあると思う。あとは、このような若者に進んで気持ちよく来てもらえるような受け入れ体制づくりが大事だ。人口減という危機はすぐそこまで来ている。

(一部、熊野新聞より引用)

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