ギックリ腰

あれは、30歳代後半、シンガポールに駐在中の出来事だった。シンガポールは赤道直下の熱帯気候が強調されるものの、日本人駐在員にとって、食事、学校、病院など家族生活全般に亘り他国と比べて非常に恵まれたところで誰もが希望する駐在地だった。当時わが社では、数ある駐在地の中で、シドニー、サンフランシスコと並んで”世界のベスト3″=”3S”のひとつと言われていた。

ある日、親しくなった友人夫婦4組で、「まる一日スポーツデイ」を開催しようということになった。普段から夫婦でテニスを一緒に楽しんでいた気の置けない仲間だったので、とんとん拍子で話が進み、朝から夕方にかけて、①スカッシュ②テニス③ボウリングの3種目をこなし、点数をつけて個人総合優勝を目指すというものだった。

スカッシュの経験者が一人しかいなくてその彼が優勢だ思われたが、テニスはそれ程得意ではなく2種目目までは混戦模様だ。最後のボウリングで決着がつくといった展開だったのでみんな張り切って勝負に臨んだ。3ゲームトータルの点数で決まるので息が抜けない。

2種目を終えてトップにいた私は、ボウリングも得意な方だったので自信たっぷりだった。過去には200アップしたこともあったが随分昔のことで、その後は170平均というところだった。それでも十分優勝できると張り切っていたが、ここで事件が起こった。2ゲーム目の中盤、フォームに注意しながらボールを投げた瞬間、腰にピリッと違和感が走った。

「あ!」やってしまった!そこそこ体力には自信があったし、これまで腰を痛めたことは一度もなかった。いきなり激痛という訳ではなく、何となく重くなったという感じでたいしたことはないと思いそのまま残りのゲームも投げ通した。結果、点数はかなり落ちたが前半のリードが効いて見事優勝したのである。

夕食は、プールのそばにあるBBQピットで子供たちも一緒にパーティを開いた。牛肉は、Nハムシンガポールの代表である友人がオーストラリアから特別に手配してくれたオージービーフでこれが超美味!当地では、週末のこのような日頃の激務を癒せるシーンが一般的で、この日も楽しい一日を終えたのだった。

明けて翌朝のこと、腰に激痛が走り、いつもよりずいぶん早く目覚めた!トイレに行くのも大変な状態になった。普通なら、その日は休んで治療に専念するところだが、私の場合はそうはいかない。現地社員が数人いても日本人マネジャーとしては自分一人しかいない部署だったので、何としても出勤しなければならない。

ただ、ひとつだけよかったことは、会社の運転手付きの車で出社させてもらっていたことだ。電車通勤の日本ではとても無理だが、痛みをこらえながらその車でなんとか出社した。いつもは、背中を曲げた悪い姿勢で座っているのに、今日は何故か腰をピンと伸ばして座っている。事情を聞いた同僚が笑い飛ばして通り過ぎる。

病院で診てもらうとやはり見事な「ギックリ腰」だ。湿布を貼ってもらって、最低でも1週間、できれば2週間腰を動かさないようにと言われた。できればそうしたが、先程の理由でそれができない。結局、一日も休むことなく出社して仕事は何とか乗り切ったが、その後4~5回ギックリ腰を繰り返すことになったのは、この時完全に治療しなかったからかもしれない。

このところは大きなぎっくり腰はやっていないが、今でも同じ姿勢を長く続けていると軽い痛みが出る。一度やったら繰り返すとはよく言われるが本当だと思う。若さに任せてバカ騒ぎをやったために起こした30年ほど前の若き日の思い出だ。皆さんもご注意を!

(八咫烏)

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