我がらの新宮弁講座②~「ひしくる」

 [ひしくる] 悲鳴をあげること。恐怖のあまり金切り声が出るさま。(熊辞苑)

今日は怖い、コワイお話といきましょう。かの淀川長治さんも「ひしくる」という言葉には深く感銘していたとのことです。

熊野に伝わる言い回しと聞いて、さすが地の果ての黄泉の国の死者が蘇る隠国のイザナミの命の眠る山深く谷深く数多の霊が宿る・・・。あの熊野の悠久の歴史を感じると感想を述べておりました。ハイ。

「悲鳴を上げる」の次に怖いのが「絶叫する」、さらにその上をいく恐怖感が「ひしくる」と私は思っていますが。ま、一方で積極的、能動的な恐怖感の発露みたいな響きも感じますね。南国風ってゆーか。

国道311号線田辺ー本宮間、旧道峠のトンネル。噂に聞いていた女性の幽霊の姿がバックミラーに映った(ような気がした)ドライバー氏曰く。「オレ気色ワリなってきてヨー、もうひしくって逃げたデ」。どえらい気分が出てますね。

やっぱり熊野の人はひしくらなアカンけど、どこそユーモラスなとこもありますね。人が亡くなった時などでも「アンタつらいやろ、泣かんし!」などと陽気に悲しむ土地柄やさか、「ひしくる」という場合もどこかそんなとこあって、せっかくの悲愴な言葉も陽転(?)させられて、ある意味かわいそうです。

子供がヒステリックに騒いで文句を言うときも、「ひしくりさがしてうるさいワ」などと茶化します。死の国黄泉の国の歴史ある恐怖の言葉もこうなると、さっぱり迫力がなくなりますね。もっと真面目にひしくれー!。

そういえば、ヒッチコック監督も言ってましたネ。「私は世界の人がひしくる映画を作るのが夢だ」と。いやぁ、方言って本当に素晴らしいですね。それでは皆さん、また会いましょう。サイナラ、サイナラ。

次回は〈すっこいとはしかい〉です。
講師:城かず坊先生

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