我がらの新宮弁講座⑨~ディープな熊野言葉 1

私たちが、小さい頃から何の疑問も持たずに使ってきた「新宮弁」。成長して都会に出ていった皆さんは、その土地で使われている言葉と故郷・新宮の言葉との違いについてどのように思われたでしょうか?そして、その後、故郷の旧友に会ったり、帰省したときなどにふとついて出る新宮弁。あなたは新宮弁をどう思いますか?

万人が認める新宮弁の達人にして新宮弁研究の第一人者・城かず坊先生が、新宮弁の深淵に迫ります。それでは、よろしくお願いいたします。(編集長・八咫烏)
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アメリカにはジャズが、フランスにはシャンソンが、南米にはサンバやタンゴがあり、日本には演歌があります。民族のリズム、地場の息吹です。濃厚な演歌を「ド演歌」というそうです。方言にもそれがあります。地場で育ったディープな熊野言葉を見てみましょう。魂(ソウル)の奥深くで響く言葉です。こういう領域になると、どのくらい理解されるのか「でんでん」自信が持てません。なるべく多くの方に通じますように・・・。

【ねゃ】
「今年の巨人はアカンね」とか「アカンの」「アカンわだ」と言うのがフツーの熊野語の言い方です。ディープな熊野語では「今年の巨人ゃ、アカンねゃ」と言います。「おう、そうやねゃ。よわい、弱い!」と合づちを打ちます。「阪神ゃ、強いねゃ」と続けます。「おうよさ、このまま行って欲しいねゃー」となり、ディープな会話が続きます。

【ね、くそー】
「やったじゃねーか」「チッ、うまいことしやがって」「やったね」「おっ、どえらいの」みたいな意味です。例えば、「宝くじ、当たったデ」、「ね、くそー」といった具合です。

【じゃあか】
これはそのまま「そうか」の意味です。「あっ、そう」と軽くいなす時は「じゃ」でおしまいです。子どもが相手だったり、余韻を残すときには「じゃーい」と伸ばします。 「では」の意味の「じゃ」ではありません。

【えーー】
「へぇーー」と似てます。「へぇ、そうかい。上等じゃねーか」と、ややお高くとまるふんい気です。ここまで来ると活字の限界を感じます。意思の伝達手段としての言葉・音声について考えてしまいますね。

それでは解説抜きで「生」の会話をお聞き下さい。
-ここは熊野某所-

△ 「おい、お前ゃ、馬券当たった言やったねゃ」(熊野にもヤミ馬券シンジケートがあるのです)
■ 「おう、おー穴当たってヨ。ほいでパチンコ行ったら、また出まくりやだ」
△ 「ね、くそー」
■ 「調子に乗って、大王地行って、飲みまくったったデ!」
△ 「えーー、じゃあかい。そりゃ、よかったのー」
■ 「女の子にモテモテでよー」
△ 「じゃろ、じゃろ」
■ 「一緒に勝浦ぃ、行ってきたデ」
△ 「ね、くそー(の3乗)。ハガイよ!」
■ 「そやけど帰り、警察ゃハッたあて、捕まってヨ」
△ 「じゃあか。テキら汚いとこで、やりやるさかねゃ」
■ 「おうよさ、かなわんよ。ったく!。ど、ウチ行っておかいさん(茶がゆのこと)食べてくるワ。ほいだらバイヨ!」

と言って、スモークガラスの運転席から腕を出して、熊野川上流部へと走り去って行くのでありました。
ディープな言葉はソウルフル。皆さんのディープな熊野語を聞かせて下さい。

次回は「まいしょうら」と「まいかっていく」=「まやかっていく」です。

講師:城かず坊

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