湯の峰温泉

鵜の峰温泉は、熊野本宮大社の南西約2キロ、四村川の支流、湯の谷川畔に湧きだしている。中辺路に沿った山峡の温泉で、古くから紀州の名湯の一つとして知られた所である。街道沿いの小さな川を挟んで、両側に旅館が建ち並んでいる。

温泉の歴史は、成務天皇のころ(2世紀)、熊野の国造大阿刀足尼の発見と伝えている。その後熊野詣の発展につれて次第に知られるようになり、中辺路の長い旅をつづけてきた人たちは、この湯で湯垢離をとってから本宮に参拝するのがならわしであったという。

温泉場には守護神として熊野権現を祀っているが古くはここに斎屋を設けて、熊野本宮の潔斎場としていた。その名残を示すものが「壷湯」と呼ばれる共同浴場で、湯はその日の天候で日に七通りも変化するという。

この壷湯には、小栗判官が妻の照手姫にともなわれて入浴し、病を癒したという伝説が残っている。周辺には判官ゆかりの遺跡があり、病気が全快したので、ひかれてきた車を埋めたという車塚、全快後自分の力を試した力石、判官の髪を結んでいた藁を捨てたところ、自然に根付いて実るようになったという不蒔(まかず)の稲などがある。

また、温泉はすべすべとして肌ざわりがよく、美人づくりの湯としても名高い。昭和32年には国民保養温泉に指定されている。旅館は木造の瀟洒な建物がほとんどで、蒸し風呂や河原に露天風呂を備えた旅館もあり、温泉湯どうふ・湯がゆ・めはりずしなどが名物である。

湯元橋ちかくの川床に湧きだしている湯は、「湯筒」と呼ばれ、温泉街の人たちの共同炊事場となっている。桝形に仕切られた露天の湯で、温度は90度に近く、卵や野菜を茹でている珍しい光景が見られる。

(八咫烏)

 

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