那智滝

那智山への道は、JR那智駅から真っすぐ北に谷を登っている。JR紀伊勝浦駅から神社、お寺前駐車場行きバスに乗り、市野々小学校前バス停で降りる。学校の横を通って右に折れると市野々王子社がある。市野々王子社は、古くは一野王子と呼ばれ、市野々集落の旧熊野参詣道東側に鎮座している。市野々王子社は、江戸時代に現在地に移り、旧地には御旅所がおかれた。

さらにバスに乗り、大門坂バス停で下車して、左手の熊野古道大門坂への坂道をのぼる。那智山への登り口の左右に、夫婦杉と呼ばれる大杉が2本あり、これより那智山の大門跡まで杉並木が続く。杉並木の道は、鎌倉時代に敷かれたという石畳の道である。この石畳道が大門坂である。「一遍上人絵伝」「熊野那智参詣曼荼羅」などに、石畳の坂道が大門に向かっている場面が描かれている。

なお、この大門坂の途中には、江戸時代に創建されたと推定される多富家王子跡がある。

バスは蛇行しながら那智さんに登って行く。鬱蒼と茂る那智原始林には、北方の烏帽子山・大雲取山・妙法山・舟見峠から流れる4つの渓流が流れ、60におよぶ滝がある。このうち修験に適した滝を那智48滝という。一番高さのある一の滝のことを大滝あるいは那智大滝(高さ133m)と呼ぶ。

滝前バス停で降りて、那智山大鳥居をくぐり、杉木立の茂る石段を下った鳥居前方に滝の姿が見えてくる。大滝の手前広場の左脇に、飛滝神社の拝殿がある。ここには本殿はなく拝殿のみがある。

なお、斎場の奥の滝近くには、お滝祈願所と滝壺拝所がある。お滝祈願所には現在、鎌倉時代作の木造役行者座像・脇侍像と室町時代作の不動明王立像が安置されている。また、那智滝付近には、滝修行者の堂宇があった。花山法皇御籠所跡、山上不動堂跡、滝見堂跡、さらに亀山天皇御卒塔婆建立跡などがある。

那智滝へおりる参道入り口の脇にある那智山経塚では、天正7年(1918)から、前後7回にわたる発掘調査が行われ、飛鳥時代から室町時代にかけてのたくさんの仏像・仏具類・密教大壇具・経塚関係品などが出土した。現在、熊野那智大社・青岸渡寺・東京国立博物館などに保管・所蔵されている遺物は、県の文化財に指定され、那智山経塚は、全国有数の仏教遺跡の一つに数えられている。

 

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