那智火祭り

那智火祭は、熊野那智大社の例大祭で、毎年7月14日午後1時から行われる。昔は扇会式祭礼、または扇祭といったが、近年は那智火祭と呼ばれて名高い。

まず大祭に先だつ7月9日、社殿を浄め、那智滝の注連縄張り替え行事がある。ついで、11日、扇張りといって大きな框に日の丸の扇子を取り付け、鏡を飾ったりして扇神輿を12基組み立てる。

扇の数は一つの框に32本取り付けるが、これは一カ月31日を表し、扇は福を招き悪を払う霊験があるとされる。また、高さ10mにもおよぶ12基の扇神輿は、1年12カ月を表しており、那智の滝を象徴するものだという。こうして準備がととのい、13日が宵宮祭。礼殿で田楽舞・大和舞などが奉納される。

さて、いよいよ祭り当日。扇神輿は扇指しとよばれるかつぎ手によってかつがれ、大社からお滝広場に向けて渡御する。扇指しは、紺地に蛇を描いた着物をきて、頭に鉢巻をまいた装いである。途中、神輿は「伏し拝み」という場所で扇立ての式を行う。

一方、滝本祭壇の前から、これを迎えるために忌火で点火された12本の大松明が出発する。松明を持つ人と火払い役は、風折烏帽子に白丁、白衣、白袴、白足袋、白手甲、白脚絆の白一色で身をかためている。両者は参道の石段で出会い、ここで大松明による扇神輿の浄めになるが、総勢200名の者がもみあい、壮絶な炎の乱闘となる。

火払い役が日の丸の扇であおいで大松明の火を払い、水かけ役は大松明に水をかけて火勢を鎮める。両者は円陣を描きながら登り降りし、何回となく争いを繰り返すが、これが火祭最大の圧巻となっている。

やがて、石段を下り広場に着くころ、大松明の炎も鎮まり、大滝の前では献饌・祝詞・玉串奉奠の舞が挙行される。その後、田刈舞・那瀑の舞が奉納されて、火祭の膜が閉じられる。

数多い大社の行事のなかでも最も有名なもので、昭和35年(1960)、県の無形民俗文化財に指定されている。

 

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