教えてワイン12~フランスワインの規格

フランスワインの規格は、法律によって次の4段階にわけられています。

  ワインの呼称 規格本数
 AC または AOC 6000本
2  VDQS または AOVDQS 10000本
3  Vin de Pays 20000本
4  Vin de Table 30000本

1. AC (アペラシオン・コントローレ) または
AOC(アペラシオン・オリジン・コントローレ)ワイン
「原産地呼称統制ワイン」「原産地管理名称ワイン」
「法定産地名表示ワイン」などと訳されています。法律で定められた諸条件を満たしている産地名を表示したワインという意味です。

2. VDQS(ヴァン・デリミテ・カリテ・スペリュール)または
  AOVDQS(アペラシオン・オリジン・ヴァン・デリミテ・カリテ・シュペリュール)
「指定産地名表示ワイン」”デリミテ”とは限定されたとか指定されたという意味で法律にもとづき地域やぶどう品種や生産本数などが規制されていることを表しています。

上記1と2の規格内容はよく似ています。ぶどう品種、栽培方法、醸造方法などは同じように規制されており、違うのは産地の限定地域と単位面積当たりの収穫量つまり生産本数の2項目にすぎません。2の産地は1の産地とはダブらない地域が指定されており、収穫量は地域の特性が分からなくなるほどの量ではありません。

1と2に分けられているのは、評価の定まった歴史あるACワイン産地とは異なり、VDQSの産地は比較的新しく開発された地域だからです。ぶどう品種と産地の相性の確認には時間がかかるものです。従って、時間が経ち評価が定まれば、VDQSワインがACワインへと変更されることになります。

ことほどさように産地名に拘るのは、産地名がそのワインの味そのものだからです。シャブリはシャブリの味がするし、ボルドーはボルドーの味がするというわけです。この辺りのことが、品種の違いが比較的大きくない米から造られる日本酒とは違ったものなのでしょう。

3. Vin de Pays(ヴァン・ド・ペイ)
ヴァン・ド・ペイは、「ヴァン」がワイン、「ペイ」が故郷とか地元という意味から一般的に「地ワイン」と訳されることが多いですが、少し誤解が生じる可能性があります。「地ワイン」という言葉は日本酒の「地酒」から連想されるものと思われます。地酒は元々地元の酒でした。地元の米で、地元の水を使って地元の蔵元が醸した酒ですが、この意味では地酒は極めて少なくなりました。

地元の酒造メーカーが作っても、どこかの好適米を使い、どこかの名水を運搬してきて使っているかもしれません。流通事情の発達により、よりよいものを目指して、よりコスト的に有利なものを目指して、米も水も日本中を動くのが現状です。その結果、地元性は薄れてしまっています。

乾燥状態で収穫される米とは違い、ぶどうは水分の多い、いわば生の状態で収穫されます。糖度が高く皮には自然の酵母が付着しているので放置すればワインになってしまう可能性が高いです。ぶどうにとってはワインの状態が最も安定している状態なのです。

ワインに関しては、原材料の段階で遠方に運搬されることはありません。ぶどうが収穫されたその土地でまずワインにされます。運ばれるとすれば、発酵に続いて定められている貯蔵が終わりワインとして完成された後になります。ここでいうワインはボトリング前の樽に入っている状態のものです。

ワインは出来た時にはすべて地元のワインなのです。日本酒でいう地酒よりはるかに地元性の高い、その土地の特性を備えた酒なのです。ここまではどの規格のものでも同じです。これ以後は、規格により、特に動くか動かないかで事情が違ってくるのです。

動いていないことの証明
ワインが造られた醸造所内でどこへも移動されず、ブレンドされず瓶詰されたものは地元性が損なわれることなく続いています。特に規格本数の少ないACワインとVDQSワインの「産地名表示ワイン」地元性存続が必須の条件となります。

そもそも規格本数が少ないのは「ワインの要素」を多くし地域の特徴がはっきり出るようにするためでした。従って、その地域の特性が間違いなく続いていることの保証を示す字句がラベルに表示されているのです。それが「醸造所(シャトー、ドメーヌなど)元詰め」の表示で。これこそフランス人が高品質と考える地域性の保証となります。この意味は重いものなのです。

4. Vin de Table(ヴァン・ド・ターブル)
ヴァン・ド・ターブルは、英語で「テーブル・ワイン」とか、日本語では「日常消費ワイン」などとちょっと馬鹿にされたような響きになってしまっています。ヴァン・ド・ターブルに馬鹿にされなければならないところなど一つもない。値段が安いから軽く見られがちですが、他の規格ではなし得ないこの規格だけの誇るべき重要な資質なのです。

ヴァン・ド・ターブルは、値段の安さを手に入れるために地域性を犠牲にしたといえます。廉価性と地域性は二律背反であって同時に獲得することはできません。安く造るためには大量に造らねばなりません。この点でフランス人は地域性の希薄になったワインの品質は劣ると考えているのです。

規格本数が多く総経費が少ないから安いのであって、経費を掛けずに手を抜いた粗雑なつくり方のせいではありません。日本人の評価の尺度からするとこの規格でも高品質なのです。

このワインはブレンドされるのが普通です。ぞれぞれのワインの造られる産地の所在範囲が一挙に広がり、フランス全土に及びます。太陽エネルギーがシェアされて薄くなり地域性が希薄になったとはいえ、それぞれのワインには元々の個性があり、味わいには隔たりがあります。

その隔たりを利用してお互いの欠点を補完したり、長所を強調したりするのがブレンドの役割となります。ブレンドという言葉の響きの印象は良くないですが、事実、味の方はバランスが取れていて、ひと口飲んだだけで突出した味にはなりません。スムーズに抵抗なく喉を通ってしまうことが印象のなさになってしまうのかもしれません。

いかがでしょう。自信をもって安いワインを飲む気になられましたでしょうか?

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