教えてワイン5~ロワール

フランスの北側で海側の地域、すなわち太陽エネルギーが弱く、温度の変動が穏やかな地域には「ロワール川」流域のワイン産地がある。太陽エネルギー が弱いと葡萄の果実の中に作られる糖分量が少なくなる。糖分が少ないとワインになった時のアルコール分も少ない。つまり、「弱い」というのは、アルコール 度数が低く弱いことを意味している。「ミュスカデをはじめとするロワールのワインは、12パーセントぎりぎりのことが多い。

また、糖分以外の生成物も太陽エネルギーが少なければ、その絶対量が少なくなる。副生成物の味も弱いわけで、余分な味がしないから「さっぱりしてい る」ことになる。また気温の変動が穏やかということは、最高気温と最低気温の差が少ないことであり、葡萄の根や葉の一日の活動状態に極端な差がないことを 意味している。朝も昼も夕方も同じようなペースで同じような生成物を作り出している。

一時的な高温状態では、葡萄はその時だけ特別な生成物を作り出すものだがそんな突出性はない。それで「穏やか」になる。酸も当然エネルギー量に応じ ており、大量にできているわけではないが、減少の度合いが少ない。ワインにした時には、アルコール量に対しては比較的豊富に残存することになり、アタック の軽い爽やかな味わいになる。つまり、ロワール地域のワインは弱くて穏やかなのが特徴だ。

ロワールのワインはおとなしく控えめで、自己を過度に主張することがない。どんな料理をも邪魔せずうまく合う。酸は比較的豊富だから食前や食間には もってこいだ。つまり食欲を増進するし、唾液の分泌を促して消化を助ける働きをする。アルコールに弱い人も含めて誰にでもよく合う。ロワールは北側で海側 だから、二重に白ワインに適した地域となるが、実はあまりおとなしすぎてパンチがないともいえる。単調で平板なワインになりやすい。

そこで飲みごたえのある白ワインにするのにちょっと強さをプラスする。たとえば、ミュスカデなどでは微に発砲するようにつくったり、澱と寝かせてア ミノ酸を溶け込ませたりして、味を複雑にする工夫をしている。あるいは、少し甘みを残して多い酸とバランスさせて、ぎすぎすした感じを和らげつつ、同時に タンニンの渋みをわずかにきかせたりする。アンジューのロゼワインなどがその例だ。よりよい白ワインを目指した結果、白ワインではなくなってしまったとい える。

(出典:安間宏見著「ワインの謎解き」)

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