燕
浮いたとたん
狂ったような速さ
激しく沈み
急に向きを変える
ああっ
ぶつかってくる
思わず目をつむる人の
頭上すれすれに
数羽
やみくもに飛ぶ
曲がり角
きれいに反れ
生け垣の
繋がった枝葉より低く
二羽
ぐんと去る
歩いていた人は
置き去りにされる
足元にくぐもった地熱を
急に感じる
今は六月のただなかと知る
霧雨が降り
燕
激しく揺れ
嘴
空中で何かを
産み継ぐことに
これほどにも憑かれ
燕
速く
とても低く翔ぶ |
荻悦子詩集「流体」より
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