荻悦子詩集より~「燕」

tsubame2  燕

浮いたとたん
狂ったような速さ
激しく沈み
急に向きを変える

ああっ
ぶつかってくる
思わず目をつむる人の
頭上すれすれに
数羽
やみくもに飛ぶ

曲がり角
きれいに反れ
生け垣の
繋がった枝葉より低く
二羽
ぐんと去る

歩いていた人は
置き去りにされる
足元にくぐもった地熱を
急に感じる
今は六月のただなかと知る

霧雨が降り

激しく揺れ

空中で何かを

産み継ぐことに
これほどにも憑かれ

速く
とても低く翔ぶ

荻悦子詩集「流体」より

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