荻悦子詩集より~「鳥」

 

鳥が
身体を垂直に
尾を下にしたまま
枝から落ちるように
すとんと下がり
そのままの姿勢で
元の位置へ昇ろうとする

胸の位置に
両足をたたみ
羽根は
ほとんど広げず
身体を震わせ
三十センチほどの
垂直の上昇

窓の外
私の目の前に
動いている鳥の
白く膨らんだ胸が
露にあった

折り曲げた足は
魚の胸の
一瞬に了解する
空の
海との近さ

水面をめがけて
すいと昇る魚
水槽の透明な壁ごしに
目に親しい魚の上昇

だが
野鳥のうごめく胸
垂直の上昇を
真正面から見てしまった時
いけないことをしたように
私の心臓は波打った

鳥は
糸に手繰られ
ぐぐっと昇るように見え
抗っているようにも見え
翔ぶというより
震えていた

荻悦子詩集「流体」より

 100 total views,  2 views today

荻悦子詩集より~「鳥」” に対して1件のコメントがあります。

  1. まるき より:

    実は、新宮文人の隣に拙著の表紙像があるのが心苦しかったのです。横のコーナーだけになって、ほっとしました。
    この鳥の詩を書いたころ、窓の外は荒れ気味の林でした。野鳥が訪れ、それを目の当たりにして、田舎育ちのはずの私が、日々、新発見をして興奮しておりました。狸も出ました。夜間、犬のように見え、意外でした。シシャモなどを投げましたが、食べたかどうか。お隣の奥さんは食パンを投げたそうです。林はなくなり、今はマンションが建っております。あの狸たちはどこへのがれたか、気になります。
    先だっての「空と湾」のウニがいるのは宇久井あたりの海岸、青い小魚を見たのは小学生のころで、湯川の海でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です