荻悦子詩集より~「空と湾」

空と湾

 

手すり
窓枠

それらを逸れて
薄く
布切れのように落ちる影は
鳥のもの

岩陰では
ウニが
あと一晩の浅い息をつぐ
網袋に集められ
実験用です
触らないでください
そう書かれた札をつけて

瑠璃色の
ごく小さな魚を
夢中で追った
潮だまりの岩の裂け目
掴んだのはウニだった
昔のあの痛さ

手すり
窓枠

それらに囲まれ
鳥のようには翻らない影を
敷物に溜め
秋ちかい夜の水温


手足

全身の刺を微かに震わせ
ウニの呼吸をする
実験中です
触らないでください

荻悦子詩集「流体」より

 71 total views,  1 views today

0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です