荻悦子詩集「樫の火」~熊野新聞で紹介される!
10月7日付の熊野新聞に、詩人荻悦子さんの紹介記事が掲載されました。
——————————————————–
新宮市熊野川町出身の荻悦子(おぎ・えつこ)さんが思潮社より詩集「樫の火」を出版した。(133ページ・2400円*税)詩集の出版は6冊目となる。
荻さんは新宮市熊野川町出身。新宮高校を卒業してから、東京で学生時代を過ごし、結婚後、相模原市に居住している。
読んでみて率直に感じたのが『距離感』だ。著者に、海外で暮らした経験があるからか其処此処に異国情緒感が漂う。”手を伸ばしても届かない『遠さ』。かと思えば、ふとした瞬間に風のように吹き抜ける『近さ』。それは例えば熊野の山や川だったり豊かな田園風景だったりする。『故郷を離れて半世紀が経った』と荻さん。著者の幼少~青春時代の記憶からなる時間軸の『遠さ』。相反する二つの距離感が錯誤する。しかし、その「距離感」こそがリアルだ。錯誤している「中心点」は「今」である。時間と距離を「今」を拠点に浮遊する、そんな独特の世界観を全編を通じて感じられる。
詩集のタイトルにもなっている「樫の火」より、一節を紹介する。
熱い炉に寄ってきて 隣人たちが交わす繰り言 憶測や 悔みきれない悔恨を 樫の火で燃やす空から うわの空へ 燻される肉の匂い 樫の火の煙 枇杷の花戸を開けて 犬を放してやろう パルは石塁を駆け上がる 裏山に樫の木はもうない パルはすっかりビ-グルに戻って 杉の森の暗がりに紛れてしまう |
荻悦子さんは言う。「『影を追えば、老いは早まる』ということわざを知り、これではいけない、もっと健やかに生きなければと考えた。出来るうちにやっておくべし。古い詩も見直して、今年の夏、第6詩集『樫の火』を出版した。影を探すよりは燃える火に託したい望みがある。」
樫の木は火力が強いという。火持ちもよい。著者の故郷熊野で育まれた感性、そして情熱は、樫の火さながら燃え続けている。
(西久保勢津子)
荻悦子(おぎ・えつこ) 1948年、新宮市熊野川町生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。作品集に『時の娘』(七月堂/1983年)、『前夜祭』(林道舎/1986年)、『迷彩』(花神社/1990年)、『流体』(思潮社/1997年)、『影と水音』(思潮社/2012年)、横浜詩人会賞選考委員(2012年、16年)、現在、日本現代詩人会、日本詩人クラブ、横浜詩人会会員。三田文学会会員。神奈川県在住。 |
記事のことをまた記事にしていただいたとは、なんだか恥ずかしいです。管理人のNさん、Oさん、ありがとうございます。
熊野新聞社主の寺本さんに、新宮の歴史・文化を再認識したい我が友人たちの「新宮ネット」のことをお知らせしました。覗いてみてくださるそうです。輪がますます広がれば、うれしいですね。