荻悦子詩集より~「渓谷」

渓谷

行かないよ
四肢を拡げ
仰向いて
浮いている

膨らんだ
声と

冷ややかな真水

干乾しにされたのだった
身重のマムシは
隣人によって
この時期

鉄錆色か黄土色の
柔らかい小石を探して
硬い石に
書いてごらん

(のだった)は大過去形
身重というのも
思い至らず
四肢は神に裏返される

落ち鮎の腹に残る砂
砂を噛む思いを
心して食べなさい
発って行く人

あなたを潰す
豪雨がまもなく
正午に
合図を変えなくては

荻悦子詩集「流体」より

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