荻悦子詩集より~「光と球体」

光と球体

ものの影を重ねて
ゆがんだ球体
空洞が
ぽってりと座っている
忘れられている

もつれて躍る光は
球面に漉され
過去はひとつの和音にこごる
ひとすじ溶け出した雫か
生まれ出た力は
われ知らずあふれ
空洞のなかを駆ける

半透明の層
厚い膜と思ったものが
脆くよじれ
ひび割れ
空洞は侵犯される

響き合う雫の音を潜ませて
淡い闇は
くるりと捲られ
侵入する光に融けて行く
空洞は
底の方から
めざましいアメジスト

荻悦子詩集「流体」より

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