2021-01-22 / 最終更新日時 : 2021-01-21 Tony 荻悦子 荻悦子詩集より~「荒地のアーモンド」 荒地のアーモンド 明け方 荒れ地を伝って来た風が 木枠の窓を揺すった 光の筋が裂かれ 壁の上で目まぐるしく踊る この風がアーモンドを落とすだろう だが その音は聞こえず 男の歌声をかすかに聞いた 呟くように息を継ぎ タント ラ ヴィタ 若くない声だった 窓際のベッドに目覚め 見たいのは アーモンドの花ざかりの木だと思った 人が幹を打ち アーモンドの実が降って来る 池の水面をせき立てて 香草が縁取る岸辺に降りしきる 草の葉のビロードを叩き 白く痛く 足の速い雨 上方へ 葉の繁みの中へ音がかき消える はげしい音に脅えた後 薄緑の林檎の実は 葉の下で暗い影になっている 石灰質の土地 アーモンドの幹を叩く人は 歌ったりはしない 荻悦子詩集「流体」より 共有:クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます) コメントを残す コメントをキャンセルメールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目ですコメント ※ 名前 ※ メール ※ サイト 次回のコメントで使用するためブラウザーに自分の名前、メールアドレス、サイトを保存する。 Δ