新加坡回忆录(7)強い通貨・弱い通貨

シンガポールの通貨はシンガポールドル(S$)。お札は、円よりも米ドルよりも小さめで、一見おもちゃの札のようでもあります。初めて見たときは、何だか「まだまだ発展途上国です。ひとつよろしくお願いします」と遠慮がちに言っているような感じがしたのを覚えています。

マレーシアの通貨リンギット(マレーシアドル)とも何となく似ているのは元々同じ連邦国だったこともあるでしょう。1983年、私が赴任した当時の為替は、1シンガポ-ルドル=120円程度でした、米ドルが240円であったので丁度その半分です。この時のマレーシアドル(リンギット)はシンガポールドルより少し(10%ほど)弱かったと思います。

紙幣のデザインはどうでもよいですが、各国通貨の交換レートつまり為替の動きは非常に重要なファクターでその国が他国と比較して経済発展をしているのかどうかの良い指標となります。私が駐在した5年半の間にシンガポールドルは対日本円で、ざっくり言うと驚くなかれ何と120円から60円になりました。この間、日本円はというと対米ドルで、1ドル=240円から120~130円になっていたのです。シンガポールドルは米ドルにリンクしたように動き、ドル円の比率に従って同様の動きを見せたのでした。

当時日本は継続的に好調な経済を維持しその後のバブル崩壊に向かってまっしぐらでした。シンガポールは独立後まだ20年と経たない発展途上国ではありましたが、他の途上国に比べて驚異的な成長を遂げていました。豊富な国土を持たないデメリットを逆手にとり、外国資本の技術をうまく取り入れ、軽工業から石油精製などの重工業に切り替え、80年代になると土地が不要な金融や観光事業に力を入れました。あの時既にロンドン、ニューヨークに続いて世界の3大金融センターと言われるまでになっていました。(その後香港にその地位を譲ることになりますが)

私が帰国した1989年の後に、シンガポールが隣国のマレーシアと比較して経済発展のスピードを更に速めて行ったことの証しとして、為替レートの推移を見るとよくわかります。ざっくり比較すると次のようになります。

Year シンガポール(ドル) マレーシア(リンギット)
1983 1 1.1
1989 1 1.4
2019 1 3.0

 

(1983年~2019年:クリックして拡大表示できます)

 

 

(蓬城 新)

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