新加坡回想録(45)ラッフルズホテル
ホテルについて追加で少し書きます。最近のシンガポール観光情報には必ずと言っていいほど写真が載っているのが「マリナベイサンズ」で、今一番人気のようですね。まずローケーションがよく、話題の屋上プールは他にはない気分を味わえることでしょう。
駐在時に、お客さんを案内して必ずお連れしてたのは、「ラッフルズ・ホテル」です。ここは、シンガポールの歴史を語る上で欠かせないコロニアルホテルで、シンガポール・スリングを飲んでも飲まなくても必ず行ってみて欲しいところです。
シンガポール建国の父ラッフルズの死から60年後の1886年アルメニア人のサーキーズ兄弟四人がラッフルズの名前を取ったホテルの経営を始めました。イギリスの植民地でもあり世界的に重要な貿易港シンガポールに建つこのホテルは国際的な名声を得るのにたいした時間はかかりませんでした。
この町に住むヨーロッパ人はこのホテルに集まりディナー、舞踏会、コンサート芝居などを楽しんだそうです。このイギリス的なホテルはヨーロッパの作家たちに気に入られ、ジェイコムラッド 、R キプリング、ヘルマンヘッセ、そしてサマセットモームなどは長期駐在しました。
モームのお気に入りの部屋はパームコートに面した78号室でした。彼の作品に登場するヨーロッパホテルはこのホテルだと言われています。1930年代の不況とそれにつながる太平洋戦争により一旦幕を閉じます。イギリス軍の降伏後、日本軍の将校の宿舎となり、名前もシンガポールの日本名を取って「湘南旅館」という駅前旅館風の名前に変えられてしまいました。
現在、シンガポール最古のラッフルズはホテルというより観光名所。世界各国から観光客が訪れ、イギリス植民地時代の上流社会の生活を想像しながら優雅な曲線を描くアーチ型の窓を見上げています。
ラッフルズホテルの歴史はそのままシンガポールの近代史とぴったりと重なると言っても過言ではなく、英国統治時代を彷彿とさせます。”イギリスよりイギリス的”と言われるラッフルズホテルのその白亜の佇まいは「ラッフルズ、その名は東洋の神秘に彩られている」とモームに絶賛されました。昼下がりのひとときをモームの「月と6ペンス」でも読んでゆっくりと過ごしてみてはいかがでしょうか。
蓬城 新
ラッフルズホテルは私も大好きな場所で、ちょっとおしゃれしてあの回廊の土産物屋でなにがしかをかい、張り込んでお茶をする、、と言うのはなんかお嬢様になったような勘違いをさせてくれて大変素敵な思い出です。とはいえマリーナベイサンズのプールもご機嫌ですよねー。当時SMAPの某携帯会社のコマーシャルが流行っていて、思わずその曲を口ずさんでおしゃれ歩きしてしまいました。プールから眺めるシンガポールの街の景色は凄まじい迫力でした。あああ、海外はいよいよ遠くなってきましたねえ。