コッツウォルズ紀行㉟ブルー・ウィローの悲恋物語

1999年に、自ら企画、実行したイギリス自由旅行記「コッツウォルズの歩き方」を掲載しましたが、実はこの旅行についてのいくつかのエピソードや感想があります。随分と昔の話で恐縮ですが、書きためたものをいくつか紹介しています。
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ブルー・ウィローの悲恋物語
ストラットフォードのアンテイークショップでブルー・ウイローの絵皿を見つけた。「中央に、風に吹かれてゆれる柳の木があり、その右横には中国風の建て物、また左端の家へと橋が架かっており、その橋の上には人が3人いる。

船が浮かんでいて、空には鳥が2羽飛んでいる」あの絵皿である。ひょっとして、お宅の居間の飾り棚に、あるいはコーヒーカップや受け皿にこの絵がありませんか?でも、この絵皿が悲恋の物語を語っていることを知っていますか?V&Aのギフトショップで買ったLeslie Bockol著の「WILLOW WARE」という本に以下のように載っています。

The Legend of the Plate

My Willow ware plate has a story,
Pictorial, painted in blue
From the land of the tea and the tea plant
And the little brown man with the queue.

What ever the food you serve, daugter
Romance enters into the feast,
If you only pay heed to the legend,
On the old china ware plate from the East.

Khoong Shee was a mandarin’s daughter
And Chang was her lover, ah me,
For surely her father’s accountant
Might never wed pretty Koong Shee.

So Chang was expelled from the compound,
The lovers’ alliance to break,
And pretty Koong Shee was imprisoned
In a little blue house by the lake.

The doughty old mandarin reasoned
It was time that his daughter should wed,
And the groom of his choice should banish
That silly romance from her head.

For years had great artists been stitching
In symbols the dress she should wear,
Her headband of scarlet lay waiting,
She should ride in a gold wedding chair.

He was busily plotting and planning,
When a message was brought him one day,
Young Chang had invaded the palace,
And taken his sweetheart away.

They were over the bridge when he saw them,
They were passing the big willow tree,
And a boat at the edge of the water
Stood waiting for Chang and Khoong Shee.

The furious mandarin followed
The Groom with revenge in his eyes,
But the little boat danced on the water
And traveled away with the prize.

But vengeance pursued to their shelter
And burned the pagoda, they say
From out of the flames rose the lovers
A pair of doves winging away.

They flew toward the western heavens
The pretty Koong Shee and her Chang
Or so says the famous old legend
From the land of the Yangtse Kiang.

I wouldn’t be one to deny it,
For the little blue dove and her mate
Forever are flying together
Across my Willow ware plate.

-Anonymous

上記を要約すると次のようになる。

むかしむかしの中国でのお話。時の皇帝に仕える税関吏の長がいた。広い敷地にある豪華な楼閣(絵柄の中央よりやや右方向にある中国風の建物)に住んでいた。庭には柳(絵柄中央にある柳の木で、これゆえにウイローパターンと呼ばれている)やオレンジの樹木があり、季節には桃が美しい花を咲かせた。

この男の秘書官にチャンという有能な青年がいた。そしてこの青年は楼閣の主の一人娘に恋をしていた。娘の名前はクーン・セといい、彼女もまたチャンを熱愛していた。

二人には身分の違いという大きな障害があった。当時の中国では若い男女の勝手な結婚など許されず、二人は危険な逢瀬を続けていたが、あるとき逢引が父親に発覚してしまった。

激怒した父親はチャンを追放し、娘は自邸の敷地にある館(絵柄の柳の右上にある小さな館)に幽閉し、庭には高く頑丈な塀(絵柄の前面にある垣根)をめぐらせてしまった。父親は実は娘の結婚を考えていた。相手は公爵であり軍人でもある年の離れたター・ジンというという人物だった。もちろん政略結婚で、娘の気持ちなど問題にせず話を着々と進めていた。

やがて、結納の日がやってきて、宴席は盛り上がっていた。その騒ぎの最中、チャンは大胆にも宴席に紛れ込みクーン・セの手を取って逃げ出した。庭を走る娘の姿を見て父親は慌てて追いかけようとするが、酒に足を取られて思うように動けない。橋を渡る二人を追う父親の姿がこの物語のクライマックス。(絵柄の橋の上の三人がそれで、一番左がチャン、真中がクーン・セ、そのうしろが怒りの父親)。

駆け落ちはなんとか成功する。二人はしばらくの間、かつてのクーン・セの侍女の家(絵柄の橋を渡ったところにある家)に匿われ、やがて(絵柄の水上に浮かぶ船)で離れ小島へと向かう。

島に逃れたチャンとクーン・セは二人で家(絵柄の左上の小島にある家)を建て農業に精を出し耕作地を増やしてゆく。島民たちにも慕われて二人の幸せは続くかにみえた。しかし、復習の怨念に燃えるター・ジンは軍隊を率いて二人を追い詰める。島民ともども勇敢に抵抗するが何しろ多勢に無勢、チャンは闘いの中に倒れ、クーン・セは絶望のうちに家に火を放ち炎の中に消えてゆく。

チャンとクーン・セの魂は二羽の不死の小鳥に姿を変え、この世の永遠の愛の象徴として天空を舞いつづける。
この物語は、はじめ中国からイギリスに渡った楼閣山水図の陶磁器にはなく、イギリスで作られたものらしい。一説にはスタッフォードシャーに伝わる古い歌からきているのではないかともいわれている作者不詳の物語である。

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