コッツウォルズ紀行⑮~バーンズリーハウスガーデン

カッスルクームで個人旅行の自由さを満喫したあと、A429を北上しバイブリーに向かう。一級国道は比較的カーブも少なく非常に走りやすい。ドライブ途中でもところどころに中世から変わらないたたずまいを残すライムストーンの家々が現れる。車は快調に走り小一時間ほどしてサイレンセスターに入った。

サイレンセスター(Cirencester)は2000年前にローマ人によって築かれた街でノルマン朝時代にはイギリスで二番目の規模を誇ったそうだ。そこからB4425をバイブリー方面にしばらく行くと第二の目的地バーンズリーハウスガーデンに着いた。イギリスの観光スポットはどこも派手に宣伝していない。ぼんやりしていると危うく見のがしそうになる。

バーンズリーハウスガーデンは、ガーデン・ライターとして著名なローズマリー・ヴェアリー夫人のプライベート・ガーデンで、その美しさはイギリス屈指とされるらしい。書物で調べてみると、「イングリッシュ・ガーデンは6~7月にピークを迎えるが、彼女の庭の素晴らしさは綿密な植栽により一年を通して庭を堪能できることにある。夏の盛りのハーベイシャス・ボーダーをイングリッシュ・ガーデンの典型のようにとらえがちだが、夫人の庭は多彩な表情を持ち、イギリスの四季をリアルタイムで感じ取れる。」とある。

このハウスは300年の歴史をもつものだが、ヴェアリー夫妻がここに移り住み、庭造りを始めたのは1951年のこと。子育てに追われる時期でもあったが、1960年にようやくその庭造りは一区切りついた。その後の彼女の活躍はめざましく、18冊もの園芸書を出版し、チャールズ皇太子の園芸の指南役もこなす。最も関心が持たれるのはオーナメント・キッチン・ガーデンである。フォーマル・ガーデンのような端正な美しさが印象的で、野菜の持つ美しさに開眼させられるとの評判である。

冬は赤みが狩ったキャベツや紫のビオラが縁取りになり、その中にネギやサラダ菜が植えられる。夏はベリー類やトマトが目を楽しませてくれる。主婦として、そして生活者としての視点が親しみやすい空間を生み出している。 それぞれの花壇は非常によく手入れされており、個人でこれだけの大庭園を管理するのはさぞかし大変であろうと思う。 こういう素晴らしい先人の財産を中世から代々守り続けている人々に敬意を表したい。ほんとうに草木は人の心を慰めてくれる。

~つづく~

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です