がんを考える㉗~内視鏡外科手術

がんの手術を行う場合、がんができている体の部位により、また、同じ臓器でもその臓器のどの部分にあるのかによって手術の方法も違ってきます。メスの入れやすい場所なら比較的簡単に手術できますが、血管や神経の通り道など複雑に入り組んだ場所だと内視鏡手術が難しく回復手術になる場合もあります。

内視鏡外科手術と開腹手術を比較すると、以下のような差があります。

内視鏡外科手術
痛みが少なく回復も早い
手術のために必要な切開は4ヵ所。それも小さな切開だからです。
・手術のあとがほとんどわからない
小型のカメラや手術器具をお腹の中に入れるための小さなキズあとが僅かに残ります。
・短期入院で経済的
精神面や経済面から考えても、メリットがあります。
・腸の癒着がほとんど起こらない
内視鏡外科手術では手術当日中に腸管運動は回復します。癒着の起こりにくい理由のひとつと考えられています。

開腹手術
大きな手術あとが残ってしまう
お腹を切開したキズあとが、ミミズ腫れのように(ケロイド)、残ってしまうことがあります。
・心にキズが残ってしまう
開腹による手術では、心にもキズ(トラウマ)を残して、精神的につらい日々が続くことがあります。
・痛みが激しく回復が遅い
大きくお腹を切り開くために、手術後も痛みが続き、腸管運動の回復に時間がかかります。
・腸の癒着が起こり再手術の可能性がある
開腹手術の場合、90%の確率で、癒着ができるといわれています。腸閉塞などで腹痛が起こると、再手術が必要になります。

最大のメリットは手術のキズあとが残らないこと
内視鏡外科手術で患者にとって最大のメリットは、何と言っても手術のキズあとがほとんどわからないということです。従来の開腹手術あとが患者にあたえる心的ダメージは相当大きく、術後にカウンセリングが必要な場合もあるほどでした。自分に負い目を感じ、すべての考えがネガティブな方向になりがちです。

内視鏡外科手術では術後の痛みが少なく、回復が早いので短期入院が可能だったりと、患者にとってはメリットが多い手術です。その理由は以下の通りです。

従来の手術方法とはまったく違う

内視鏡外科手術は、腹腔や胸腔、後腹膜腔などに小さな穴(径0.5〜1cmの切開)を数カ所開け、そこからビデオカメラと特殊な手術器具を入れモニタを見ながら行ないます。

今後は、従来の開腹手術の半分以上が内視鏡外科手術に置き換わると予想されています。

内視鏡外科手術は、腹腔鏡下手術ともいい、胆嚢切除手術において、お腹の中にカメラを入れて行ったものが最初であったために、その名前がつきました。現在では、最も多く行われている消化器・一般外科領域以外に、肺や心臓などの胸部(胸腔)、首などの頚部、婦人科、泌尿器科、形成外科、整形外科、耳鼻科などの手術にも応用されているために、内視鏡外科手術と名前を統一して呼ぶようになっています。

胃や大腸のファイバースコープで行うポリープ切除などの「内視鏡手術」と「内視鏡外科手術」とは、まったく違うものです。

術後の腸管癒着がほとんど見られない

手術に癒着はつきものとされ、現在でもその防止法はありません。内視鏡外科手術では癒着による腹痛などがほとんど起こらず、このことが医学的見地からの本法の最大の利点といえます。

癒着とは

手術によって傷ついた正常な組織同士を縫って閉じると、その組織はくっついて(癒合)自然に治っていきます。これを「創傷治癒」といい「癒着」の1種です。しかし、治っていく過程で本当はくっついて欲しくない組織同士がくっつくことがあり、一般にこれを「癒着」と呼んでいます。癒着ができても、症状がなければ問題はありませんが、時に腹痛、腸閉塞、不妊症の原因となる場合があり、このような症状が現れると再手術が必要な場合があります。

(八咫烏)

 

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