がんを考える㊾~乳がん 20(後日談)

妻は術後の検査のため退院後初めて病院へ行った。手術痕は、胸の下の部分を脇からみぞおちにかけてまるで日本刀で袈裟切りにあったような感じだ。サージカルテープをもらっており、お風呂に入るたびに自分でテープを貼り代えている。その傷が順調にくっついているか、他に問題はないかなどを検査してもらう。

その日に、今後の治療法が決まるのかと思っていたが、病理検査の結果がでないと方針は決まらないという。手術の際に取り除いたがん細胞を検査して、その結果によって治療法が決まってくるのだが、検査には6週間かかるという。もともと検査自体に時間がかるものなのか、それとも、がん専門病院ということで、混んでいて時間がかるのかわからないが待つほかはない。

少し拍子抜けして帰った翌日、妻の処へ一本の電話がかかってきた。入院時に相部屋だった隣の患者さんからだった。遠く四国から検査のため、たった今羽田についたところだという。入院中に交わした妻との会話が随分励ましになったらしく、退院時に電話番号を教えて欲しいと言われていたという。

これから病院に向かい同じような検査を受けるということで、妻は自分が昨日受けた検査の様子を話してあげていた。その後もお互いの病状を話し合うことで少しは不安が軽減されるようだ。1人で不安を抱えて悩むよりも、こんなちょっとしたことでもいいことかもしれないと思った。

妻は、前回と同様、相も変わらず、自分が一足先に経験したことを彼女に話すだけだが、何だか自信があるようにさえ見えてほほえましくもある。身体は相当に弱っており家事もまともにできない状態だが、外に対しては気丈に元気にふるまっていて、なかなか頼もしい。この分なら、前回よりは回復も早まるのではないかと期待している。

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