がんを考える㊽~乳がん 19(まとめ)

これまで、乳がんについて学んだことを19回にわたり書いてきましたが、ここで一旦区切りをつけてまとめてみたいと思います。

がんは加齢に伴い罹患するリスクが高くなります。高齢化社会の今日、2人に1人が生涯において一度はがんにかかるであろうと推計されており、がんは珍しい病ではなく誰でも遭遇する可能性のある病気であると言えます。

日頃からがんになりにくい生活習慣を心がけると同時に、万一自分や家族、親しい友人ががんと向かい合うことになったときには、がんについての正しい知識を身につけてそれと戦うことが必要であると思います。

乳がんは女性に一番多いがんで、40~50歳代をピークに発症や死亡が増加しており、日本人女性の約12人に1人が生涯で乳がんにかかる危険があるといわれています。男性が発症することは皆無ではありませんが、頻度は女性の100分の1くらいです。

乳がんは子育てや介護、仕事など女性として一番忙しい時期にかかりやすい病気でもあります。家族や将来のパートナーがかかるかもしれないと考えると男性にとっても無関係な病気ではないといえるでしょう。

予防することが大事なのはいうまでもありません。市区町村で乳がん検診を実施している年齢(多くの場合は40歳以上)に達したら積極的に検診を受けることをお勧めします。乳房の診察(視触診)だけでなく、マンモグラフィというレントゲン検査を用いた乳がん検診が推奨されています。

検診を受ける年齢に達していなくても、乳房にしこりなどの異常を感じたら、迷わず専門の医療機関を受診するべきです。早期発見によって治療が格段に楽になるからです。先進諸国では60~80%の女性が受診していますが、日本人女性の乳がん検診の受診率は41%です。

忙しい生活の中でも、自分自身の健康を意識し、定期的にチェックする習慣をつけることが大切です。罹ってみて初めてそう思うのが常で、健康に自信を持っている人ほど気をつけることが大事です。

ライフスタイルを見直すことで、乳がんになることを予防できる可能性があります。
①たばこは吸わない
②他人のたばこの煙をできるだけ避ける
③お酒はほどほどに
④バランスのとれた食生活を
⑤塩辛い食品は控えめに
⑥野菜や果物は不足にならないように
⑦適度に運動する
⑧適切な体重を維持する
⑨ウィルスや細菌の感染予防と治療
⑩定期的ながん検診を受ける
⑪身体の異常を感じたらすぐに受診する
⑫正しいがん情報でがんを知ること

がんは、今や治る病気になりつつあります。地域がん登録における乳がんと診断された患者の5年相対生存率約90%(2003~2005年診断例)です。

【おわりに】
今年、妻が罹患したことで、乳がんについて勉強せざるを得なくなりました。素人が学べることはたかが知れているかもしれませんが、病気と闘うためにはその病気について知ることから始めることが大事だと思います。

理由の一つは、不必要な不安にさいなまれることを避けるため、いま一つは、医学の発達により治療の方法が多岐にわたっており、時には治療方法を選択する必要があるからです。

つたない知識ですが、患者さんあるいは家族の方々にとって、少しでも不安の解消にお役立ていただければ幸いです。

P.S.
2週間ほど前に退院した妻ですが、10月末現在未だ、脇腹の痛みがとれていません。外科的手術だったこともあり食欲はまずまずですが、睡眠障害は依然として解消しておらず、闘病生活は当分続きそうです。今後も、通院しつつ担当医とよく相談をしながら根気よく療養していくことになろうかと思います。

妻は、入院するとき個室に入ることを嫌がり必ず相部屋に入ります。理由を聞くと、1人だと、あれこれ悪いことばかり考えてしまうからだそうです。今回も、相部屋で同日や後から入院してきた患者さんと親しくなり、いろいろとお互いの病状などを話していました。

同病の患者といえども、各自の病状の違いや持って生まれた性格の違い、はたまた病気の経験の差によって病気と闘う姿勢は随分変わってきます。中には、カーテンを閉め切って他の患者と触れ合うことを極端に嫌がる人もいます。それはそれで致し方なく、お互いの気持ちを慮るのがいいでしょう。

隣りのベッドの患者さんは遠隔地からきていましたが、わがままを言って担当医を困らせていたようです。手術を受けることは覚悟して入院したものの、その結果に不安が募ってどうしようもない気持ちになっていたようです。妻は、自分が担当医から聞いたこと、そしてそれに対して自分はどう感じたかを、受け売りながらも、その患者さんに話してあげたことで随分落ち着きを取り戻したようです。

実は、妻は昨年、腎臓がん手術を受けた時に、同部屋のもっと重篤な治療を受けていた病気の先輩から、いろいろな話を聞いて随分気が楽になったことがありました。その経験から、2年連続のがん手術にも多少は落ち着きが出来て、むしろ同部屋の患者を気遣う余裕が出来ていたようです。「一丁前によくいうよ」と思いつつ、成長したようで少し頼もしく見えた次第です。

(八咫烏)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です