がんを考える㊱~乳がん 7(ステージ)
病期(ステージ)について
病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いて「stage(ステージ)」ともいう。病期分類には2種類あり、わが国の学会で主に行われている臓器別がん登録の「癌取扱い規約」による病期分類と、UICCと呼ばれる国際分類がある。
わが国では、0期、I期、II期(IIA、IIB)、III期(IIIA、IIIB、IIIC)、IV期に分類される。UICCでは、手術後の検査結果でI期をさらにIA期とIB期に分けているが、他はわが国の分類と同じである。
病期は、がんが乳房の中でどこまでひろがっているか、リンパ節転移があるか、骨や肺など乳房から離れた臓器への転移があるかなどによって決まる。乳がんの治療方針は、この病期ごとにおおよその指針が決められている。
また、病期やがんの性質により、将来がんが再発するリスクをある程度推測することができる。手術により切除された病変について病理検査・病理診断が行われ、がんの広がり、形態、性質を詳しく調べることになる。腫瘍の大きさ、広がり、年齢、異型度(グレード)、HER2タンパク質、ホルモン受容体、Ki67の情報などを基に、将来の再発リスク、追加治療の必要性が検討される。
治療方針については、さらに糖尿病や心臓病など別の病気の有無、年齢や患者自身の希望なども考慮に入れて決まっていく。
乳がんの病期分類 | |
0 期 | 非浸潤がんといわれる乳管内にとどまっているがん、または乳頭部に発症するバジェット病(皮膚にできるがんの一種)で、極めて早期のがん |
I 期 | しこりの大きさが2㎝以下で、リンパ節や別の臓器には転移していない |
IIA 期 | しこりの大きさが2㎝以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節は周囲の組織に固定されず可動性がある。または、しこりの大きさが2~5㎝でリンパ節や別の臓器への転移がない |
IIB 期 | しこりの大きさが2~5㎝で、わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節は周囲の組織に固定されず可動性がある。または、しこりの大きさが5㎝を超えるが、リンパ節や別の臓器への転移がない |
IIIA 期 | しこりの大きさが5㎝以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節は周辺の組織に固定されている状態。またはリンパ節が互いに癒着している状態。またはわきの下のリンパ節転移がなく胸骨の内側のリンパ節に転移がある。あるいは、しこりの大きさが5㎝以下で、わきの下または胸骨の内側のリンパ節への転移がある |
IIIB 期 | しこりの大きさやリンパ節への転移の有無に関わらず、皮膚にしこりが顔を出したり、崩れたり、むくんでいるような状態。炎症性乳がんもこの病期に含まれる |
IIIC 期 | しこりの大きさに関わらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移のある、または鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある |
IV 期 | 別の臓器に転移している 乳がんの転移しやすい臓器:骨、肺、肝臓、脳など |
妊娠・出産について
乳がんの治療は、治療後の妊娠や出産に影響を与えることがある。将来出産を希望している場合には、まず、治療を始める前にその希望を担当医に伝え、よく相談することが大切です。 |