移住を考える③~移住ブームの背景

このところ、地方への移住ブームが広がりを見せているといわれています。定年後シニア世代が都会を離れて田舎暮らしを望むという悠々自適組に加えて、現役世代の地方志向もかなり増えてきているようです。

移住とひとことで言いますが、実は「生活拠点を変える」という人生の中で非常に大きなできごとであるし、そう簡単に決められることではないでしょう。従って、決断する前にできるだけ詳しい情報が欲しいところです。

ずっと以前になりますが、人口の東京集中という問題が取り上げられたことがありました。でも、その時の問題点は、地方の過疎化問題よりも、通勤ラッシュの解消に力点がおかれていたような気がします。首都機能を地方へ移すことが一時検討されましたが結局実現しておらずバランスは調整されておりません。

都会を離れて地方・田舎へ定住することを「移住」と定義するなら、都会に住む人間をなるべく多く地方へ移住させることは国家的な課題です。東京に周辺3県を加えた東京圏の人口は2015年で約3600万人。日本の全人口の25%以上に相当します。

さらに、高齢化が急速に進み、東京圏内では、2016年から25年までの10年間で75歳以上が175万人増えると予想されています。このことは、老人介護施設の不足問題、あるいは首都圏直下型地震など災害リスクなど大きな問題に繋がっていくでしょう。

一方、地方は人口減と産業衰退という問題に直面しているのが実情です。そんな中、2002年から、ふるさと暮らしを希望する人たちを地方へ移住させるという運動に取り組んできたのが、「認定NPO法人ふるさと回帰支援センター」です。

参加自治体や会員の会費、協賛団体の寄付などで成り立っていて、正式名は「特定非営利活動法人100万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センター」です。労働組合の連合や経団連、農協、消費者団体などが連携してつくったNPO法人で、Iターン、Jターン、Uターンといった地方生活を望む人の受け入れ態勢を作っています。

「団塊の世代」約680万人が、2007年から定年退職し始めました。当時彼らの約半数は都市部に住んでいると言われましたが、その何割かが地方から出てきた人たちだったとしたら、田舎に帰ることは「回帰」となります。最初の移住ブームの主役だった彼らを支援するということで「ふるさと回帰支援」という言葉が使われたようです。

~つづく~

(八咫烏)

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