移住を考える⑩~地域おこし協力隊(3)

移住を考えるとき、今、農山漁村に対する国民意識や行動が多様化しつつあり、さらに農山漁村自体もまた多様化が進んでいると考えられる。移住や地域おこし協力隊を目指すものの増加は、この二つの多様化を要因としていると説明できる。

農山漁村サイドが、地域の住民の職業構成、結集の仕方、地域づくりへの意欲等の点で多様化している。このことは、世代・性別、移住動機(目的)、希望する仕事の面でも多様化し、移住を考え始めた都市住民にとっては、受け入れの幅が広がったことを意味している。そのため、現に移住が発生し、それにより地域はさらに多様化して、より幅広い受け入れが可能となる。

このような形でのある種の好循環が生まれているのではないだろうか。分かりやすく言えば「いろいろなムラがある」という状態は、「いろいろな人」への門戸を広げていると言えるのである。

しかし、同時にこのことは課題も生じさせている。それは、移住する者、それを受け入れる地域の双方が多様であるならば、両者のマッチングこそが重要になるからである。先に、地域おこし協力隊の地域観として「仕事の場」「自分探しの場」「貢献の場」「定住の場」の4つのタイプがある。

たとえば、「自分探しの場」と考え、必ずしも定住を望まない若者に、活動終了後の定住条件の整備をPRしても必ずしも効果があるとは限らない。逆に、農家率が高く、比較的若い専業的農業者が多数を占めている農村に、「自分探しの場」を求める若者を紹介しても受け入れられる余地は少ないであろう。

つまり、移住者と受け入れ側双方の多様化が地域おこし協力隊の活動の活況を生み出しているとすれば、両者のマッチングこそが最重要課題になるであろう。そのためには、受け入れ地域は自らの地域の特性から協力隊に何を望むのかを、逆に協力隊を志す者は地域の中で自分が何をしたいのか、何ができるのかを明確にすることが求められる。

そして、行政関係者は、数が増えれば、実績があがればよいという対応ではなく、一人一人の若者、一つ一つの地域にとって、ベストのマッチングを追及することこそが必要になるであろう。

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