ヤタガラスのお気楽闘病記22~赤ひげはいるのか?

「赤ひげ」という映画をご存じだろうか?かの有名な黒澤明監督が手掛けた傑作で放映されると忽ち大人気となった。江戸時代後期の享保の改革で徳川幕府が設立した小石川養生所を舞台に、そこに集まった貧しく病む者と懸命に治療する医者との交流を描いている。

社会に対する怒りを忘れない老医師(三船敏郎)の赤ひげと、長崎帰りの蘭学医である若い医師(加山雄三)との師弟の物語を通して、成長していく若い医師と貧しい暮らしの中で生きる人々の温かい人間愛を謳いあげている。

ストーリーとしては、出世を疑わなかった若い医師が小さな養生所に配属され日々悶々とする中、金持ちからは50両、100両と大枚をせしめ、貧乏人からはお金を取らない腕の良い老医師に次第に惹かれて行く。第39回キネマ旬報ベスト・テンで第1位に選ばれたほか、第26回ヴェネツィア国際映画祭で男優賞(三船敏郎)、サン・ジョルジョ賞などを受賞した名作である。ご覧になっていなければ是非にとお勧めしたいヤタガラス一押しの映画である。

さて、私事で恐縮ながら正月に「熊野エクスプレス」( https://kumano-express.com/ )というサイトを立ち上げた。私個人のメインであった新宮ネットが2年ほど前から継続投稿ができなくなり、半ば瀕死の状態であったのを再生したものである。病のせいでPCを操作する時間が極端に制限される中、ハイムのひろばのリニュアールを引受けたことで時間がなくなってしまっていた。しかし、再生はそれほど大変ではなかった。何故なら、旧サイトの中身がかなり充実していたため書き下ろしの記事をそれほどたくさん必要とせず、現在、新旧織り交ぜての記事投稿ということで進んでいるからだ。

本題に戻ると、この「熊野エクスプレス」の協力メンバーで昨年末にZOOMミーティングを開いた。高校3年の時のクラスメイトが殆どでみんな熊野人、10名ほどが参加したのだが、その中に都内の病院に勤める医師M君がいた。参加者の中には50年ぶりに顔を(PC、スマホ画面で)合わせて話をする者もおり大いにに盛り上がったのだが、特にM君の話がその時の中心となった。

M君は、元々少し健康に不安を抱えており本来なら我々より1学年上のはずが、1年遅れで我々の同期になっていた。卒業後は医師を目指したがその後も健康不安が続き、結局、医師免許取得まで通常より8年も余計にかかってしまったという。現在、ある病院に勤めているが、月曜日から土曜日まで毎日遅くまで必死に勤めを果たしている。身体の弱かった自分がいろいろな人のおかげで今に至っていることに感謝してもしきれないと恩返しのつもりで今を生きているという。

この話を聞いたときに、赤ひげを思い出した。常に患者に寄り添い、自分のことのように患者を思い治療に取り組む。そんな医師に診てもらいたいものだ。彼はこの先も自分の経験した辛い過去を忘れず、力の続く限り「赤ひげ」先生であり続けるだろうと思う。彼の高校時代はクラスでもそれほど目立った存在ではなかった。それが、こんなに立派な医師として今を生きていることに感激せざるを得ない。自分など恥じ入って穴があったら入りたい心境だ。

赤ひげは間違いなくいる!

ヤタガラス

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