橋杭岩(はしぐいいわ)は、和歌山県東牟婁郡串本町にある奇岩群で、吉野熊野国立公園に属し国の名勝や天然記念物の指定も受けている観光名所である。鬮野川(くじのかわ)小字橋杭の海岸から紀伊大島方面へ大小約40の岩が南西一列におよそ850メートルもの長きにわたって連続してそそり立っている。

直線上に立ち並ぶ岩の姿が橋の杭のように見えることから橋杭岩と呼ばれ、干潮時には岩の列中ほどに附属する弁天島まで歩いて渡ることができる。なお、弁天島の西側には朱色の鳥居があり、それをくぐると小道があって少し登ると岸壁を背にした祠があり、参拝することができる。また橋杭岩を通して見る朝日はとても美しいと評判で、日本の朝日百選の認定も受けている。

起源をたどると、今から1400万年ほど前、紀伊半島の南部では著しいマグマの活動があり、地表から数百㍍のところへマグマが流れ込み、冷えて固まった結果、岩脈となった。やがてそれが隆起し、風雨や波による浸食を受け、現在のような姿になったという。

橋杭の立岩伝説
弘法大師と天の邪鬼が熊野を旅したときのこと、弘法大師の偉大さに圧倒された天の邪鬼が、本州と大島の間で橋の架け比べをしようと弘法大師へ打診した。一晩という区切りを設け、まずは弘法大師から橋を架け始めた。見る見るうちに巨大な岩を海中に立てる弘法大師の姿に焦りを感じた天の邪鬼は、邪魔をしようと鶏の鳴きまねをし、朝が来たと勘違いした弘法大師が作業を止め立ち去った結果、「橋杭」が今も残っているという伝説で、橋杭岩の名の由来ともいわれる。

名の由来に弘法大師が関係し、弘法大師の偉大さが伝説として受け継がれていることは、熊野というこの土地ならではのものであろう。世界遺産となった熊野古道とともに、吉野熊野国立公園の自然と歴史が織りなす造形美を楽しんでいただきたい。