こうちゃんの想い出 22~こうちゃん車に轢かれる

こうちゃんが、我が家にやってきてしばらくの間、会社が休みの日には一人で散歩に連れて行くよりも、家族で一緒に連れて行くことが多かった。

一人と一頭だけでももちろん楽しいが、人数が増えれば増えるほど散歩が楽しくなるのだ。それは人間だけでなく、こうちゃんも同じ気持ちのようで、家族全員で出かけたときなどの喜びようはそれはなかった。

10歩ほど歩くたびに後ろを振り却って、みんなちゃんと後をついてきているかどうか確かめるのだ。まるで、自分が家族全員を率いて先導しているように。特に、角を曲がった時などは、その確認は徹底して行われ、一人でも見えないと暫く待って、待っても来ないときは戻ってでも確かめるのだ。こんな時、本当に家族の一員であることを強く感じていっそう愛おしく思える。

ある日、いつものように散歩に出かけた。歩いて数分で多摩川の土手に出ることができるので便利に利用していた。道路は車が通るので十分な注意が必要だが、土手に出れば、自転車は通るが車は通らないので比較的安全である。土手に出るのに一つだけ信号を渡らねばならない。

その日は、まず私がこうちゃんと出かけて、その信号を渡って土手に出た。直ぐ後から追いかけて来た妻が、赤信号で止まった。私は、こうちゃんに「ママが来たよ!」と振り向かせるとママに気がついて喜んだ。また3人一緒に散歩できることが嬉しくてたまらないのだ。

とその時だった。私が手にしていたリードを振り切ってこうちゃんは道路に走り出たのだ!もちろん車が続いて走っているときだった。「危ない!」と叫んで私も道路に走り出てこうちゃんを捕まえに行った。しかし、間に合わなかった。一台の車のドア部分にドン!とぶつかってこうちゃんは大きくはじき飛ばされた。

3、4メートルは弾き飛ばされただろうか。幸いにも後から来た車は気が付いて止まってくれたようで、別の車に轢かれることはなかった。こうちゃんは、その後、立ちあがって、元来た道の方に掛けて行った。私はすぐに後を追いかけて抱きかかえた。

「大丈夫か?!」と言いながら、脚をさすりながら折れていないかどうか調べてみた。お腹もさすってみた。ワンワンと泣いてはいたが、やがて鳴き止んだ。しばらく、身体のあちこちをさすりながら調べていたが、外から見る限り大きな怪我はなさそうだった。

ぶつかった車の運転手もおどろいて心配してみにきてくれたが、悪いのはこちらなので文句を言うことはできなかった。こうちゃんは、見つけたママの側に駆け寄って行きたくて駆けだしただけであるし、悪いのは、気を許してリードを強く握っていなかった私だった。

外見では大丈夫そうだったが、内臓破裂などの心配があるので、その場でタクシーを呼び病院へ急いだ。歩いて行ける近所の動物病院では、もしかの時に手術などできないので、王禅寺にあるペットクリニックへ行った。ここなら手術などの設備も充実していると聞いていたからだ。

事故にあったことを説明して、内臓などを詳しく検査してもらった結果、運よく骨折もしていないし、特に問題ないだろうとのことであった。ただ、大学病院に行けば更に詳しくで診てもらえるとアドバイスしてくれた。結局、数日後、たしか相模市にあった大学病院に予約を入れて更に詳しく検査してもらった。そこでも問題なしとの結果だった。

あれだけ跳ね飛ばされて何もなかったのは本当に幸運だった。私は、こうちゃんを抱きかかえながら、ごめんね!ごめんね!と何度も何度も謝った。もし脚でも折れていたら、とても痛い目をしたであろうと思うとどうしようもない気持になった。

このことがあって以来、私は、リードをつかむ手もしっかりと握りしめるように気をつけるようになった。

 

 

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