こうちゃんの想い出 1 ~はじめに

明けましておめでとうございます。はじめにお伝えしたいのですが、おめでたいお正月に、愛犬を亡くした暗い話などとは思わないでください。悲しい思いは大晦日の除夜の鐘とともに捨て去りました。今はもう光に満ちた未来に向けて元気いっぱいです。これは、そう、幸せの報告なのです。これまでとても幸せだったことに感謝しつつ、楽しかった想い出を綴ります。

クリスマスを一週間後に控えた昨年の12月17日、我が愛犬、孔ちゃんは天国へ旅立って行きました。16年という長い間、どんなに寝不足でも毎日早起きして一緒に散歩してきた最愛の相棒はもういません。散歩は犬の為ならず、自分の健康のためと言っては来ましたが、どんなに体調が悪くても一緒に歩くことで元気をもらっていたことが今はっきりとわかりました。

二日後、近所のワンちゃん仲間たちも駆けつけてくれて、お別れをしてくれました。お葬式をすませた後、何もする気になれずボーっとした日が何日も続きました。家族が出かけることに気づくと、ワン・ワン「行くな!」と吠えていたこうちゃん。ベランダに鳩が来たのを見つけるとワン・ワン「来るな!」と吠えていたこうちゃんはもういません。
テーブルで食事を始めると近くに来てちょこんと座り、自分の番が来るまでおとなしく待っていたこうちゃん。フードをあげようと立ち上がり、計量カップからこうちゃん用のお茶碗に入れる時の”音”を聞くだけでそれと悟り、部屋をぐるぐると喜びまわっていたこうちゃん。私が横になって居眠りをしていると、よく、ほほや手を舐めにきた、あのこうちゃんはもういないのです。
いつもそこにいたはずのこうちゃんがいない日常など考えられませんでした。今にも別の部屋から飛んできそうな気配がしています。我が家では、私も妻も娘たちもこうちゃんによく話かけていました。そう、人間と話すのとまったく同じように毎日声をかけていました。話しかけるとじっと目を見つめてくるのです。「何を言ってるんだろう?」という顔をして。
いつも思うことですが、私は家族が正月を迎える準備をしている歳末の雰囲気は嫌いではありません。あゝ、今年も一年みな元気でいられたことに感謝をしながら、新しい年はどんな年になるのかと思いを馳せるのです。ただ、昨年ばかりは全く違ったものになってしまいました。あれだけ愛したこうちゃんがもういないことが納得できずにいました。
我が家の2021年の最後の2週間は、こうして寂しく暮れていきました。明けて2022年、新年を迎えても晴れがましい気にはなれず、何をしていてもふと頭を過るのはこうちゃんのことばかり。3年前に母親が亡くなった時も心が傷みましたが、今回は何か特別な感じがしています。母親は、亡くなる直前まで”私を護ってくれている”存在でしたが、こうちゃんはこちらが”護ってあげるべき”存在だったからなのかもしれません。
大勢の方々からたくさんの慰めや励ましのことばをいただきました。お気もちはとてもありがたくみな暖かいものでした。これまで愛犬を亡くした飼い主たちは同じ経験してきており、みなそれぞれに悲しみを乗り超えてきているはずです。そんな時自分は慰める側の立場でしたが、いざ立場が逆転してみると喪失感が予想よりはるかに大きく、心にぽっかり空いた穴は当分埋められそうにありません。
ペットロスという言葉がありますが、何年も引きずっている方もおられるようです。でも社会の一員として冷静に考えた時に、このことでいつまでも他人に気を遣わせるようでは情けない。それに、私のそんな姿はを見れば、こうちゃんもきっと喜ばないはずです。ちょうど新しい年がスタートしたばかりですし、ここは、気持ちを入れ替えて元気を出さなければと思います。
実は、複数の方からこの状況を乗り越えるために「楽しかった思い出」について考えるといいよとのアドバイスをいただきました。わざわざ「ペットロス克服の仕方」を書いてくれた方もいました。そのいくつかの項目の中に「楽しかった時の思い出を整理する」というのがありました。

確かに、楽しい想い出はたくさんあります。否、考えてみると、悲しい想い出などなくすべてが楽しい想い出ばかりです。そういえば、亡くなった日以来家族と話すのは、楽しかった日々の想い出ばかりでした。別れを前向きに受け入れるというのは時が経たないと難しいと思いますが、楽しい想い出を辿ることなら何とか出来そうです。

そこで、一念発起して、こうちゃんとの想い出を書き綴ってみたいと思い初めています。身勝手な思い入れとたくさんの親ばかぶりを書いてしまいそうで、それは恥ずかしいことではありますが、哀しみを乗り越えるための一助となるならやってみようと思ったのです。想い出のひとつひとつを辿りながら書いていきますのでお付き合いください。

西  敏

 

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